9-14 オレが言うのも何だけど
ガガの顔に、首に手足に見た事の無い・・・・・・痣? ピクピク動くソレは、生きているよう。
「アッ、アアッ。」
きっと祝の力だ。この男に何か、恐ろしい事をしたんだ。口をパクパクさせながら胸を押さえている。
「大王。今すぐガガの胸を、剣で突きましょう。」
ウナが叫ぶ。
「何を。殺すなら甚振って、死んだ者の」
「それでは手遅れ、間に合わないんだぁぁぁぁぁ。」
大王の言の葉を遮り、カッと見開いたウナ。泣きながら飛び出し、真っ直ぐ港へ走る。舟を押して飛び乗り、櫂を握った。
『死にたくない死にたくない死にたくない』と、目をグリングリンさせながらブツブツ。耶万で起きたアレコレを思い出し、セッセと舟を漕ぐ。
離れなければ、少しでも遠くへ逃げなければ。
耶万の社の司、禰宜、継ぐ子も人で有って人では無い。アレはバケモノ。大王も大臣も、他の人も社の言い成り。
逆らえば殺される。だから従う、黙って従う。
あの男は、罪人ガガは耶万から押し付けられた。『引き取れ』って、押し付けられた禍。きっと何か起こる。
オレは悪くない、ちゃんと伝えた。直ぐに胸を突いていれば、きっと。
ブチッ、ブチブチッ。
ガガの口から鼻から、血がドッバァ。耳からも噴き出し、目玉がポンと飛び出した。
「アッ、アアアッ、アァァァァ!」
腰が抜け、叫ぶ事しか出来ない。
お偉方から溢れる闇を取り込み、ガガの体がグネグネ動く。もう人では無い。
蔦がシュルシュルと伸び、ポポンと葉が開く。集まった人からも闇を吸い取り、ドンドン育つ。
メリッ、メリメリ。
グングン大きくなり、建物を突き破った。ドンと土の上に根を張り、多くの人が逃げ惑う。
プゥゥ、ボンッ。
花が咲いた。花糸がビヨンと伸び、舐めるように搦め捕る。クルンと縮んでゴクゴク。ペラペラになった骸は根に触れ、シュワッと消えた。
ヴォン、ヴォヴォヴォン。
爆音を轟かせ、鎮の西国から溢れた闇を吸収。柱頭はガガの顔だが、叫ばずニヤリ。ソレはソレで不気味。
「ア、アアア。」
響灘に出て直ぐ、ウナが乗った舟まで花糸が伸びた。恐怖で顔を歪ませながら、必死で漕ぐ。
アイツは生かすか。
耶万に仕掛ければ『恐ろしい事にナリマスよ』って、シッカリと伝えてもらおう。にしても西国、腐ってるなぁ。オレが言うのも何だけど。
闇を宿して無いのは取り込まず、生かす。親無しになっても、どっかの社が何とかするだろう。真っ直ぐ育てよ、悪い大人になるなって、ハハッ。
オレに言われたくネェよな。悪い悪い。
プクッ、ブゥゥゥ。
実を付けたか。コレが割れれば、闇が光に変わるんダッケか。闇の力、凄いな。蛇が言ってたの、コレか。あの子が居れば耶万は・・・・・・。
うぅん、どうだろう。
なぁカズ。オレたち、大野の役に立ったのか?