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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
光芒編
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9-12 覚えてねぇだろう


七国ななくに西国にしくにを嫌っていた? 嫌っていたから攻め込んだのか。そんなコトでいくさを。



「黙れ! 嫌われているのは耶万やまだ。真中まなかの七国だけでは無く中の西国、しづめの西国にまで仕掛けておいて、何を言う。」


「はぁ? 先に仕掛けて来たのはソッチ。光江のヤツらが言ってたぜ。イキナリ舟で突っ込んできて、つわものがゾロゾロ降りて来たって。」



攫った人を売り払うと決めた五人。悦のシュウ、(うね)のユリ、大野のカズ、安のミエ、光江のマツは知っている。


両の目に焼きつけるように、シッカリ見たのだ。耶万に敗れた後、七国や西国が兵を送り込んできたのを。



シュウたちワルに集められた生き残りは七国、西国にも怨みを抱いていた。


ヤツらが仕掛けなければ、もっと多くの人が生き残ったハズ。耶万が負けた国を取り込んだのは、多くの兵を集めるため。だから殺さず、追い詰める。


ヤツらは初めから殺す。子も女も、年寄りも。



『耶万の夢』を試したのは、きっと焦ったからだ。


毒を強めて追い払わなけりゃ、耶万が落とされる。ソレだけは嫌だったんだろう。死んでも死んでもバンバン試して、思いっきり毒を強めた。




「先に仕掛けたのはソッチ。コッチは仕掛けられ、守るために戦った。攻め込んだのは、戦を終わらせるため。」


「そんな事は」


「有るんだよ。耶万のがな、悔しそうに言ってた。『仕掛けられた』って。」


「グッ。・・・・・・そんな事は良い、ココは。ミアとカセは今、ドコに居る。」


「そんな事だと? フザケンナ! どれだけ死んだ、殺された。テメェらが仕掛けなければ、オレたちは幸せに暮らせてたんだ。戦に駆り出される事は、まぁ有っただろうよ。生きて戻れなかったカモな。それでも父さん母さん、兄さん姉さん、妹や弟たちも死なずに済んだ。」



海に近い光江、その奥にある悦。川添いにある安、大野。支流の先にある采。どこも酷く荒らされた。


戦う力が残っていた加津、千砂ちさ会岐あき、大石はマシ。



今井に松田、安井の生き残りは『耶万の夢』を試され、一人残らず死んだ。


強い力を求めた耶万は、祝を奪うためダケに蛇谷を滅ぼした。兵が足りないからと近いのに仕掛けまくって、多くの国を滅ぼした。



真中の七国、中の西国、鎮の西国が仕掛けなければ生きていた。殺されずに生きていた。貧しくても助け合いながら、みんな幸せに暮らしてたんだ。


それなのにテメェらは、耶万に仕掛けた。




「やまとを一つに纏めるには、力で従わせるしか。」


「黙れ! 纏めたけりゃず、西国を纏めろ。七国にも同じコト言えるけどな、テメェら甘ぇんだよ。」


「何を言う。」


まことを言われて悔しいか。えぇ、どうなんだ。」



オレたちは罪を犯した。攫って殺して死なせて、裁かれて死んだ。生き残りはオレだけ。他は死んだよ、アチコチで。


殺すなら殺せ。オレを殺しても、テメェの娘は戻らない。



ひとやに入れられた子は皆、見せられるんだ。お偉いのに穢されるのを。


頭を押さえられたり目をひん剥かれたりして、嫌でも見せられる。『早く育って、皆を楽しませろ』と言って、グチャグチャに壊すんだ。



あぁ攫ったよ、獄のを。けどよぉ、覚えてねぇんだ。


耶万から盗んで西に運んだ。大石の辺りだったか、川を下って海に出て、光江に隠すまでは生きてたよ。死にそうなのを売っ払って、残りは松田に運んだ。



「ココは、娘は!」


「だから知らねぇ、覚えてねぇ。テメェらも同じだろう。どうやって誰を殺したか、全て覚えてるのか。殺し過ぎて覚えてねぇだろう。え?」


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