1-8 使命
エンが壊れてしまう前に、そっと逃がす。気づかれないように準備を整え、送りだした。
数か月後。王城から使いが来た。城内を捜索させろだと?
「特質系の俯瞰、拘束の才を持つ私に、お任せください。」
エンの安全を第一に考え、追跡隊に志願した。正直なところ、却下されると思った。しかし、あっさり認められる。
「必ず連れ帰れ。才を無駄にするな。」
一班は、ディ、サイ、スイ。西へ向かう。二班は、アン、サン、カー。東へ向かう。全員、実戦経験者。
数年後。二班、やまと上陸。
アンは、嫌っている。サンと、化け王を。とはいえ、協力するしかない。適当な獲物を選び、乗っ取る。一年後、集まることに。
陸に上がってすぐ、いい匂いがした。漁村の奥にある、小さな村。アンにとって、狩りは生き甲斐。思わず、舌なめずり。
「どうしたい。」
次から次へと生まれる弟妹。出来の良い兄姉。砂漠のように渇いた心を、憎しみが支配している。
「どうしてほしい。」
褒められたい。認められたい。みんな、いなくなればいい。兄も、弟も。姉も、妹も。
「じゃあ、叶えてあげよう。」
恐ろしいほど、無邪気に微笑む。
「こわい?すぐに会えるよ。」
喜んでいる。
「そろそろ、いいかな。」
ほくそ笑んだ。つづいて、ひとりづつ。
アンは美食家だ。強欲、貪欲、嫉妬、絶望。そんな命ほど、味がよい。魂は吸わない。死にたくないから。
じっくりと狙いを定め、食らう。押さえつけられるまで、食らう。害されるまで、食らう。食らう。村から村へ渡り歩いた。
「食いすぎじゃないか、アン。」
不愉快!
「見つかったの、サン。」
気に障ったか?
「見つからない。」
狩りが楽しすぎて、なんて言えない。
「まあ、どこかにいるだろう。そろそろ、行くか。」
最近、疲れやすいんだよなぁ。
「ねぇ、王様。エンを見つけたら、呼ぶわ。それまで、別行動。良い考えでしょう。」
「賛成。頼むよ、王様。」
「いいよ。そうしよう。」
狂犬王、何を考えている。まあ、いい。追跡隊にいれば、戦陣に赴くことはない。危険とは無縁の、充実した日々。一班の連中も楽しんでいるだろう。スイがいれば移動も楽だ。
どこかに弟がいる。正直、どうでもいい。妹を庇う、あの目。イライラした。だから送ってやった。化け王の城へ。
嫌がると思ったのに、感謝された。わからん。アレのどこがいいんだ。狂犬王だぞ。犬だ、犬。
まあ、散散な目にあったんだ。のんびりと生きろ。この兄が許して・・・・・・。
長持ちしたよ、サン。もっと早く、朽ちると思った。アン、王女で良かったな。父上に感謝しろよ。
さて、崩壊するまで、どれくらいかな?