9-9 私から伝えよう
耶万から仕掛けたワケじゃ無いのに、攻め込まれたと思い込んでいる。止めてよね。いきなり兵を送り込んで、殺したり攫ったのはソッチ。
「チョン切る?」
「送るなら、付けとかなきゃ。」
「えぇぇ。」
「鎮の西国って、遠いんだよ。」
「・・・・・・そっかぁ。」
楽しそうに物騒なコトを言う、耶万社の良い子たち。ちょん切られた耶万の大王コロ、大臣キキ。揃って真っ青。
もう無いのに、シュッと縮み上がる。
「耶万は守るため、戦ったダケ。鎮の西国に攻め込んだのは、イキナリ仕掛けられたから。質に取った人は耶万にも、組み込んだ国にも居ない。だから生きているのか死んだのか、分からない。」
社の司、アコが言い切る。
「社を通しても分からなかったんだ。どうしようも無いよ。」
力無く話す、禰宜ザク。
救い出された子は返された。残る事を選ぶのは親無しか、親元に帰りたくない子。裁きが終わると釜戸山から旅立つ。
どこへ引き取られたのか、何をしているのかナド、決して言わない。それが釜戸社。
「耶万に恨みを持ちながら、弱い人を攫ってイロイロした生き残りは一人。大野のガガだけ。釜戸社と浅木社、耶万社でも裁いた。だから『コイツがヤリマシタ』って、引き渡すよ。良いね。」
アコに問われ、コロとキキが激しく頷く。
「大王と大臣が認めたんだ。後は任せるよ。」
ザク、ニッコリ。
「はい。お任せください。」
逆らったら死ぬ。スイと同じは、あんなのは嫌だ。アレじゃバケモノ。死ぬのは嫌だけど、死ぬなら人として死にたいんだ。オレは。
「私は耶万の大王、コロ。」
おぉきみ? 大王!
「私は鎮の西国、儺国。津佐の水門頭ウナです。儺王より言伝を預かって参りました。」
「そうか。で、何と。」
「はい、申し上げます。」
・・・・・・ハァ。攫われた人を『返せ』ってのは良いよ。当たり前さ。王じゃ無くても言うよね、きっと。けど儺国に従え? 兵を寄越せ? ナニイッテンノ。
『逆らえば戦を仕掛ける』って、攻める気マンマンじゃん。
耶万だけじゃ無い。組み込んだ国にチョットでも入ったら、迷わず消す。ってか学べよ。どれだけ死んだ、失った。
コッチにはね、妖怪の国守が居るんだよ。耶万のためには戦わないけど、国を守るためなら戦う。それが国守さ。
バンバン狩るよ、サクサク狩るよ。
「儺王からの言伝、確かに聞いた。」
「ハッ。」
受け入れろ、耶万王。儺国に下れ。真中の七国を落とす前に、中の東国を落とす。それが儺の考え。
「先王と社の司が、耶万に組み込まれた国を含め、全て調べた。質として耶万に送られた人は、見つからなんだ。」
はぁ? ソレを信じろとでも言うのか、耶万王よ。
「アコさま。儺の使いに伝えても、宜しいでしょうか。」
コロが振り返り、サッと膝を折った。
「私から伝えよう。」
闇の中から、スッと姿を現わす。