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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-6 乱雲山へ

「ツウと生きる。」



コウが、燃えるように熱い目で、まっすぐ私を見ている。嘘じゃない。心の底から、そう思ってくれている。うれしい。応えたい。たとえ、どんなことがあってもコウと。コウと共に生きたい。生きて行きたい!


となりの家の、男の子。妹思いの、やさしい子。爺さんっ子の、賢い子。こっそり泣いていた私に、花を摘んできてくれた。出来ることをすればいい、そう気づかせてくれた。弟とおなじ年の、物静かな男の子。


コウが、私と生きると言ってくれた。断るなんて、あり得ない!




「コウと生きる。」



ツウが、お日様みたいに笑って、言った。まっすぐオレを見て、はっきり言った。嘘じゃない。心の底から、そう思ってくれている。


夢じゃないんだ、うれしい。この先、どんなことがあっても、ツウと共に生きる。離さない。泣かせない。幸せになろう、ツウ。


となりの家の女の子。みんなに優しい女の子。泣き虫なのに耐えられる、強くて、しっかり者。年とるほどに美しくなって、こっそり泣いて。でも、笑って、おはようって言ってくれた。ドギマギしたな。




手をつないだ。手のひらを合わせて、ギュッとして。それから、指に口づけした。


ツウはポッとなって、モジモジした。オレもポッとなったのかな。顔が熱い。



「ツウ、乱雲山に行こう。それから、家を建てて、田んぼ作って、ずっと、ずっと幸せに暮らそう。」


笑っている。ツウが笑ってくれている。


「とっても、とっても遠いけど、行こう。」




雲井社くもいのやしろの祝、フクには、遠く離れた人の考え、思い、願いを読み取り、伝える力がある。


遠くといっても、一山くらい。雲井社と、野比の社の祝は、昔から助け合っている。お互い、会ったことはない。いつも木菟ずくを通している。


野比の祝には、先見さきみの力があり、何か悪いことを見ると、木菟を通して雲井社に知らされる。野比の祝から、稲田のコウの話が出たのは、いく年前だったか。



時が来たら、二人を雲井社に託したい。二人は釜戸山に、助けを求める。そうなる前に、木菟を遣わせる。


釜戸社かまどのやしろの祝へ、『稲田の子。コウとツウを、日吉ではなく、乱雲の社へ使わせ。』そう、伝えてほしいと。



いつか、コウとツウの子が狩り人になる。その子が育ち、山を出たいと言ってきたら、霧雲山へ来るよう、伝えてほしいとも言われた。


私はそんな先まで、生きていられるだろうか。きっと祝を継ぐ娘に、託すことになる。




「霧雲山。木菟、鷲の目。祝辺の守、仰せに従い。稲田の子、ツウとコウ。二人の子、連れて参りました。」


は、祝辺の守?・・・・・・ハッ!


「よく、来てくれました。木菟、鷲の目。皆、どこか痛めていませんか。」


「はい。傷一つ、ついておりません。」


「そうですか。では、使いを出します。」


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