9-1 違うと言ってくれ
新章スタート!
隠の世が閉ざされ、一年。まだ開く気配が無い。なのに戦、戦、戦。人は殺し合わねば生きられぬ生き物なのか? 奪わねば生きられぬのか。
人と妖怪の合いの子がポコポコ生まれ、人の世は大荒れ。鎮の西国と中の西国は瓢の者に任せられる。けれど真中の七国は難しい、いやムリ。
損害を被るのは隣接する国。中の東国に負のアイテムが飛んできて、もうタイヘン。大問題のオンパレード。逃げられないよ、丸投げもダメ。さぁ、どう為さる。
光芒編、はじまります。
隠の世が閉ざされ、一年。人と妖怪の合いの子、人から生まれた妖怪も、瓢の皆が片づけた。
『異なる国の民』として生きる妖怪たち。隠の世では無く、人の世の外れ。闇が集まるが、猫神の目が光っている地で暮らしている。
何か有れば直ぐ、隠の世が動く。
ありがとう、稻羽。良い使わしめを持った。これからも頼むよ。ニヤニヤ。
「大国主神。そろそろ、御戻りください。」
使い兎、後ろ足をペシペシ。大国主神の使わしめ、稻羽は因幡へ里帰り。出雲にはイマセン。
人から生まれた妖怪が暴れに暴れ、テンテコ舞いの忙しさ。もうギリギリ。そんな時、瓢の妖怪より『残らず狩った』と告げ知らせを受け、張り詰めていた糸がプチン。キュゥゥ、バタン。
オロオロなさる大国主神に呆れ慌てた使い兎、木俣社へ。
話を全て聞き、クワッ。スゴイ顔して大社に飛び込む、木俣神の使わしめ白兎。
稻羽が生まれる前から兎神に仕えていた白兎にとって、稻羽は我が子のようなもの。真っ赤な目で睨み、サッと連れ帰りましたとさ。
つまり、実家で療養中です。
「稻羽。」
「因幡に居られます。」
「八上比売・・・・・・。ハッ! 」
ギギギと振り返ると、そこには。
「ナッ、にも。」
須勢理毘売に見つめられ、冷や汗ダラダラ。
「えぇえぇ、何も。」
仰らずとも分かります。
「耶万に奪われた姫は。手掛かりは。」
ココ。九つになる末娘が攫われ、まだ戻らない。耶万め、許さん!
「儺王、耶万へ使いを送りましょう。」
「使い、だと?」
姫を、子を奪われたのは儺国だけでは無い。他の姫は殺されたか、死んだ。売られて生き残った供を見つけ出し、聞き出したのだ。違い無い。
骸は獣に・・・・・・。手足を捥がれ、打ち捨てられたと。
耶万の外れにある仕置場には、打ち捨てられた骸が散らばっている。見分けるのは難しい。だから皆、泣きながら持ち帰る。
取れたか抜かれたか、啄まれたのか判らない。目も耳も無い、酷く傷ついた頭を。
「儺王。珂国と対国より、使いが参りました。」
「通せ。」
どちらも多くの人が攫われ、殺された。質を奴婢として扱うなど、信じられない。珂国は長の娘、対国は兵頭の倅。他の子も死んでしまったのか?
頼むココ。どんな姿でも良い、生きていておくれ。
「耶万より戻った水手が飛び起き、叫びながら言いました。『子が囲いに入れられた』『耶万の毒を飲まされ、血を吐いて死んだ』『男でも整っていれば襲われ、差し込まれていた』など、聞くに堪えない事を。」
何だって! まさか九つの子にも、そのような事を。
「囲いに入れられた子の中に、我が娘は。」
・・・・・・違うと言ってくれ。
「珂の国長の娘、ミアと共に。」
「アァァッ。」
「私の倅も、ココ姫と共に押し込められていたと。戻った兵が。」
対国の兵頭が、泣きそうな顔をして言った。