8-272 掴んだ幸せを守ろう
良那からアコが戻り、社の司になった。他の継ぐ子も、共に出た子も戻り、とっても賑やか。
『そろそろ戻ろう』なんて話していたら、大王に据えたスイが死んだ。話には聞いていたが、あのような事になるなんて。
耶万を狙う国は多い。鎮の西国も真中の七国も、力尽くで奪いに来るだろう。
幾ら纏めても、強い力を持っていても子は子。侮られる。
「アコさま。私ども、国に戻ります。困った事、扱いに困る事が有れば、いつでも頼ってください。」
「はい、イツさま。」
「万十も氛冶も戦を望みません。必ず、拗れる前に頼ってください。兵は送れませんが、必ず力になります。」
「はい、アヤさま。」
新しい大王はコロ、大臣はキキ。見込みはアレだが、居ないよりは良い。どちらかと言えば、スイより勝っている。
・・・・・・すまない、他に居なかったんだ。
「万十の大臣、イツさま。氛冶の大臣、アヤさま。長い間、ありがとうございました。攻められれば戦いますが、耶万は決して、戦を仕掛けません。これからも宜しく御願いします。」
そう言ってアコが頭を下げた。耶万神に仕える人、継ぐ子も皆、倣う。
アコは生まれ持ったが、継ぐ子は違う。闇を宿し、力を得た。気掛かりだが、この子たちなら乗り越えられる。信じよう。
「イツさま、アヤさま。厳しく叩きこまれた全てを活かし、社の皆と、耶万を立て直します。」
「大王ロロ、大臣キキ。命ある限り耶万のため、民のために尽くします。」
良い心掛けだ。しっかり尽くせ。巫や覡は騙せても、祝は騙せないぞ。
清めの力を持つ子は、耶万の子で有って耶万の子では無い。攫われた祝女、祝人の子だ。いつか耶万から生まれるまで、代わりを務める。
光の雨を浴び、心を入れ替えた。ように見えるダケで、生まれ持ったモノは変わらない。耶万の人は戦好き。狙った獲物は逃さない。手だてを選ばず奪うのだ。
『耶万の夢』を使って。
万十と氛冶の人たちを、『ありがとう』と手を振って見送った。そして思う。
多くの人が死んだ。生き残りも、戻った人も少ない。けれど変わる。荒れた田や畑に手を入れて、掴んだ幸せを守ろう!と。
隠の世へ戻ったコンコンず。一山から輿に乗り、和山社へ。見聞きしたコト全て、御伝えする。
「嫌呂、悪鬼。二妖とも良く働いた。」
「ありがとうございます。」
とっても嬉しそう。
「これからも我の使い狐として、力を貸してくれるか。」
「はい、喜んで!」
・・・・・・シマッタ。
流山に戻って、のんびり暮らそうと思ってたのに。どうしよう、断れないよね。マルさま助けて!
「ハッハッハ。流山で穏やかに、和やかに暮らせ。」
嫌呂と悪鬼、揃ってキョトン。見合ってニッコリ。
いろんな事があったけど、蛇神の使い狐として認められたんだ。これからも二妖、仲良く暮らそうね。
「大蛇様。末永く、よろしくお願いします。」
モフン。
大貝山編でした。光芒 編に続きます。お楽しみに!