表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
786/1584

8-270 光の雨


「おや、スイ。育ったね。」


ニコッ。


「ヴガッ、ヲガヴァバガ。」 アコ、ナニヲシタ。



困ったな。そんな目で見ないでよ、小さい子が泣いちゃう。ココには継ぐ子しか居ないけど、いろいろ思い出しちゃうじゃないか。めてよね。



「王やおみの代わりなど幾らでも居る。死んでください、耶万やまのために。」


「ヴガゲヴガ、ヲヲガザダベェェェ!」 フザケルナ、ココカラダセェェェ!


「なぜ逃げる、なぜわめく。耶万を良くしようと、王になったのでしょう?」


「ヲァ? ギヴガァ。」 ハァ? シルカァ。



オレは悪くない。大王おおきみだ、耶万の大王だ。水手かこからし上り、ココまで辿り着いたんだ。


それなのにアコ、テメェが耶万に戻ってからオカシクなった。



継ぐ子のクセに許せねぇ。どっかの偉い祝が、大王の種を育てたダケじゃないか。ッケ! 大王に似て良かったな。



「私はね、ずっと前の王が穢した、蛇谷の祝の子ですよ。お忘れですか? 耶万が滅ぼした、小さな国です。」


「ゲヴィガギ・・・・・・。」 ヘビタニ・・・・・・。



覚えて無いな。ん、ってコトは耶万に逆らって滅んだ、小さい国かぁ。ケッケ、コレは呪いか?



「光と闇は背中合わせ。私が母から受け継いだのは呪いでは無い、光だ。さぁ王よ、身も心も耶万にささげるのです。」



見れば判る、その姿。


肌に浮かぶ黒い蔦は、その身に宿った闇。種が芽を出し、闇を取り込みながら育ったのです。やがて花が咲き、光の実を付けるでしょう。



恐れる事はありません。民のため、国のために死ぬのが王。闇を吸えば吸うほど、豊かな実が生る。弾けて光が降り注ぎ、辺りを清めるのです。



「ヴヲォォ。」 ナニィィ。



メキメキ、メキメキメキ。ボッ! ニョロニョロ、ググゥゥ。バチバチ。



スイの体からポンポン、蔓が伸びだした。支えなんて無いのに、空へ向かって真っすぐ伸びる。


葉を広げ、耶万に流れた闇を吸い込む。キラキラ輝きながらグングン伸びるソレは、天つ国にも届きそう。



キュゥッ、ポン。ポポポン。



アチコチで大きな花が咲き、葉がワサワサ動く。勢いよく闇を取り入れ、輝きを増す。香りに吸い寄せられるように、耶万の外からも闇が集まった。



ポポン、ポン。ワッサワッサ。



耶万に滅ぼされた国だけじゃない。大貝山の統べる地からも、闇が吸われる。ドクンドクンと、幹のような茎が脈打ち、花が散る。



キュゥゥッ、プゥゥッ。メキッ、メキメキ。パンッ!



凄い勢いで膨らんだ実がはじけ、耶万に光が降り注ぐ。耶万の人たち、大喜び。


全ての実が弾けると、スイだったソレはシュルシュル萎み、砂のようにサァッと崩れた。光が舞い上がり、耶万を優しく包む。



「終わったね。」


アコの肩に乗った、てるが呟く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ