8-267 闇を深めてはイケナイよ
憎しみを抱き、闇を宿した人は脆い。アッと言う間に壊れ、闇堕ちする。だから何が有っても、社の事には加えない。
継ぐ子の多くが闇を宿した。アコのように生まれ持った者は、一人も居ない。清めや守り、風や水を操る力など、闇の力と引き換えに失ったのだ。
「私たちにも手伝わせてください。」
「妖怪に・・・・・・。だから、お願いします。」
「妹も弟も食い殺されました。だから、この手で。」
軽はずみな事は言えない。一人ひとり、違うから。でも、これだけは言える。闇を深めてはイケナイよ。
「皆の気持ちは嬉しい。けれど、受け入れられない。耶万に戻って直ぐ、話したね。『何が有っても、社の事には加えない』と。」
アコに諭され、唇を噛む。
「憎しみは消えない。忘れたくても、決して忘れられない。でもね、繰り返し思い出す事で薄れてしまう。楽しかった事、嬉しかった事、幸せな思い出も全て。」
ハッ!
「そんな事、望むかな?」
黙って、横に振る。
「悪しい妖怪は祝の力を持つ私たちが、一つ残らず片付ける。だからね、信じて託しておくれ。」
「アコさま。この度の裁き、私たちが加わります。」
アサが闇の力を持つ子、四人を従え膝を折る。
「心を乱さず、闇に飲まれず務めるように。」
「はい。」
ハルには闇を水に変え、操る力。サラには闇を剣に変え、操る力。キヤには闇を伸ばし、操る力。アオには闇を思い通りの形に変え、操る力が有る。
「腰麻のアキは虫の息。けれど妖怪の体を乗っ取れば、それなりに強くなります。」
先読の力を持つユイが言うのだ、違い無い。
「先ず私が闇を開き、妖怪の動きを止める。」
アサがニコリ。
「助けを求めず騒ぐでしょう。聞き流し、激しく打ち当ててください。」
アコもニコリ。
「マノ。継ぐ子たちからビシビシと、風を切るような音が。」
耶万神、オロオロ。
「皆、張り切っているのです。見守りましょう。」
「そう、なのか?」
目が、血走っているような・・・・・・。
時を同じくしてフタ、クベ、モト、ミカの四妖。打合せ通りアキのモヤモヤを、大石の外れまで誘い導いた。
「皆さま、そろそろ来ます。」
大石神の使わしめバウ、ニコリ。
「ありがとうございます。では、はじめましょう。」
大貝神の使わしめ土、キリリ。
マノの闇にアキが食い付いた。暫く泳がせ、土が糸をシッカリ付ける。田鶴が咥えて飛び上がり、耶万の仕置場へ。
グワンと立てられた闇の壁に着くと、迷わず思い切りブン投げた。
叩きつけられ糸ごとズルズル。腹ペコ妖怪、思わずパクリ。
「やっと、やっと手に入れた。」
アキが妖怪の体を乗っ取り、ニヤリと笑う。