8-266 食い付いた
グッスリ眠って、パッチリ目覚めた使わしめたち。社を通して伝えました。明くる日の昼、雨が降っても思い切って行います。
「何か有れば、話しておくれ。」
「土さま。宜しいでしょうか。」
耶万の継ぐ子ユイ。リキと共に大倉に逃げた子の一人で、先読の力を持つ。
「どうぞ。」
「では、申し上げます。」
アキのモヤモヤは困った事に、そのままでは祓えません。ですから悪しき妖怪に食わせ、体を乗っ取らせてください。
暴れますので、闇の力を宿した皆さん。エイッと、お願いします。
アキのモヤモヤは脆い。だから直ぐに魂がボロボロ崩れ、壊れます。それから大祓を執り行えば、清められるでしょう。
「私の力は弱くても、必ず役に立ちます。信じてください。」
ユイは子、器が出来ていない。なのに力を揮った。
「信じます。ありがとう、ユイ。」
田鶴に優しく抱きしめられ、フワフワの羽に顔を埋めたユイ。思わずウットリ。
「悪しい妖怪なら、今井に幾らか。」
マノが切り出す。
今井は耶万との戦に敗れ、滅んだ国の一つ。生き残りは皆『耶万の夢』により命を落とした。神は御隠れ遊ばし、使わしめも居ない。
「何をしたのだ?」
「毒を持ち出し娘を一人、死なせました。耶万の獄に入れられ、懲らしめられるのを待っています。」
ちょん切り待ちデス。
「妖怪も裁くのか。」
「はい。耶万や、耶万に組み込まれた国で罪を犯せば、人でも妖怪でも裁くと。」
人を入れる獄にアコが闇、リキが清めの力を込めた。妖怪が触れたダケでジュッとなる。
妖怪が人を襲い、孕ませようとしたのだ。許すワケが無い。スイたちと同じように切り取ってから、嬲り清めます。
待っててネ。
「社の司よ。その妖怪、アキに食わせて良いのか。」
土に問われ、アコが微笑む。
「はい。嬲り清められれば、それで。皆も宜しいか。」
揃って、ニッコニコ。
「悪しいモノを祓い清めるため、御使いください。」
禰宜のザクが、サラリと言い切る。
周りに流される事なく、己で考え動ける人は悟る。耶万は終わりだと。
親に逆らって、思い人と逃げた者。子や親を連れ、逃げ出す者。己は残り、子や思い人を見送った者は諦めたのか。
いや違う、望みを託したのだ。
この子だけには、この人だけには生きてほしい。己に割り当てられた時を渡し、末永く幸せに暮らしてほしいと。
社の離れで暮らすのは、継ぐ子だけでは無い。親や縁の者から託され、残された子や娘が多い。娘の多くが、癒える事の無い傷を。
目の前で親を殺され、心を閉ざした子。縁の者を皆殺しにされ、生き残った子。親しい人を、目の前で殺された子。憎しみを抱き、歪んだ子。
闇を宿していても、祝の力が無い者は離した。だから離れは二つ。一つは、継ぐ子が暮らす家。もう一つは、託された子の家。