8-265 おやすみ三秒
話し合いの末、大貝神に御伝えする事に。
中の東国は閉ざされているが、中は開いた。大貝山へ行こうと思えば、社を通して行ける。
とはいえ、統べる神で在らせられる。幾ら妖怪の国守でも気が引ける。よって、ロロが行く事に。
千砂神の使わしめは蜜蜂、加津神の使わしめは鳶。会岐神と、大石神の使わしめは犬。ピュゥっと飛んで行けるのは、鳶のロロだから。
「ハァァァァ。」
大貝神、フラァリ。
「お、御気を確かに。」
使わしめ土、大慌て。
何と、何という事だ。腰麻のアキは確か、海を越えて来たバケモノに食われ、死んだハズ。己を切り取り、人に植え付け産ませた子も皆、死んだと。
残っていたのか、まだ残っていた。禍の種が。刈らねば! 今、直ぐに。
「土、大祓の儀を執り行う。この度も使わしめで囲い、祓ってから清める。」
「はい。腰麻の田鶴さま、耶万のマノさまに御願いしようと思います。」
耶万の社の司、アコは大王に闇を植え付けた。スクスク育ち、やっと思い直したとか。
大貝の地まで導くより、耶万の外れで執り行うのが良かろう。大王に大臣、臣も耶万社に従うのだから。
田鶴さまは頼まずとも、加わり為さる。アキは腰麻の生まれ。散散やらかし会岐、大石、加津、千砂に助けられた。
四妖とも国守。この度の事には加わらぬ。となると、腰麻のユキを。いやイカン。
耶万の祝に頼むより他ない。落ち着いたら、甘い実を差し入れよう。そうと決まれば、その前に。
「土。耶万に頼り過ぎでは、ないだろうか。」
ギクッ。
「社から闇が溢れたのはアレだが、過ぎた事。」
「はい。」
モヤモヤは耶万を目指して進んでいると聞く。
耶万の外れに、罠を張るのは良い。あの地は耶万の仕置場。罪人が捨て置かれるまで、獣は動かぬ。近づく人も居らぬし、良いのだが・・・・・・。
キュルルンとした目で見つめられると、照れるではないか。分かった、わかったから、キュルンに留めておくれ。
「では、謀を練りましょう。」
皆さん、こんばんは。司会の土です。どうぞ宜しく。
「アキのモヤモヤは今、会岐の外れをグルグルして居ります。」
蛇だって網、張りますヨ。蜘蛛と違って目に見えませんが。
「会岐、大石、千砂、加津の国守が力を揮い、大石の外れまで支えてくれます。」
社を通して、ユキが頼んでくれました。ニコッ。
春の風を止める事は、どうしたって出来ない。大石の外れまでは何とかなるが、その先は難しい。海から一山に風が流れ、舞い上がってしまう。
風に流されず行うには、使わしめが動くより他ない。
はじめにマノが闇を纏い、アキを誘う。それからアキを、土の糸で留める。田鶴が土を咥えて、耶万の仕置場まで一っ飛び。
一足先に着いたマノが作った闇の壁に、土がブンと振って切る。糸の重みでスルスル下へ。モヤモヤが落ちたら、大祓の儀を始める。
決まったぁ! グッスリ眠ろう。・・・・・・グゥ。