8-262 引き渡そうかな
一人では海に出られない? 知らないよ。
浅瀬まで押して、飛び乗れば良いじゃないか。沖まで出たら、海神が送り届けてくださるよ、きっと。
「照、どうしてグルグル回ってるの?」
「舟を漕いだ事、無いんだろうね。」
オレの力じゃ、どうする事も出来ないよ。生きて戻って貰わなきゃ、何も伝わらないじゃないか。困るなぁ。
「海神、真中の七国まで戻しましょう。あの舟を飛国の浜まで、こうビュンと。」
「疲れた、もう寝る。」
「いけません。蛇が、照が睨んでます。他の蛇とは違うんですよ。」
使わしめ甲、前足でペシペシ。
御隠れ遊ばした蛇谷神の使わしめ、ウロから聞いたのだ。照は人に憑く事で力を強めると。同じ隠だが、他の蛇とは違うと。
祝の力を生まれ持つ人に触れられるのだ。闇で包んで動かしたり、浮かせたり出来る。そんな力を昔から、ずっと蓄え続けている蛇。それが照。
「解った。分かったから止めなさい。」
亀のペシペシ、痛いのよ。
「申し訳ありません。」
良く分からぬが、この慌てぶり。照とやらは、はじまりの隠神と縁が有るのか。もし、そうなら・・・・・・マズイ。
戦、戦で海は大荒れ。イロイロ落とされイライラして、つい。
ヨシ、送ろう。鎮の西国やら中の西国なら、イロイロ纏めて送り込もう。ん、そんな目で見る・・・・・・というコトは。ハッ!
グワンと引いて、波の壁が。アッ、来る。きき、来たぁぁ。
「わぁ。あの御力でココまで、押し寄せたんだ。」
「そのようだね。」
振り落とされないように気を付けてネ。なんて考えながら、手を振って見送った。
持ち込まれた品をアレコレ見て回り、溜息。何だコレ、鉄の塊じゃないか。この戦、西国が関わっている。鎮か中か、どちら共。
「アコ、真中の七国は引くよ。あの男が闇を抱くか、闇に近づけば育つ。アレを見れば気付くだろう。耶万に手を出せばドウなるか。」
「そうだね。・・・・・・西国が使いを送ってきたら、闇を植えたガガを引き渡そうかな。」
釜戸山と浅木に裁かれ、悔い改めたらしい。ガガは七国や西国から攫われた人たちを、耶万のに隠れて甚振ったり売り払ったり。子にも。
王の姫とか長の娘とか、扱いが違っていた。見張りも立っていたし、奪えなかったハズ。
継ぐ子がコッソリ食べ物とか運んでたし、出られるようにしてから出たって。だから攫われたか奪われたのなら、その後。
ガガは奪い過ぎて良く覚えて無いらしい。
獣を入れる檻に、整った子を五人入れて運んだのは覚えていた。その中に王とか、長の子が居てもオカシク無い。
早稲の人が見つけて、釜戸山に引き渡したんだっけ。その中に居たら。いや、まだ戻されてない。中の東国は閉ざされたまま。
開いているのは鎮の西国、中の西国、真中の七国。他は閉ざされてるから、社を通しても知らせられない。良那で聞いたよ。そうでしょ、照。