8-259 阿鼻叫喚、再び
戦を始めるなら先ず使者を立て、口上を述べる。コレ当たり前。大軍を引き連れ攻め込んだ時点で、一掃されても文句は言えない。
正当防衛です。
「なぜ耶万を攻める。真中の七国に下る気は無い、引け。」
堂堂と、アコ。
「仕掛けられた戦だ。勝つまで引かぬわ!」
名乗らなかった王弟、吠える。
「耶万は仕掛けられ、攻めたダケの事。忘れたとは言わせない。」
過剰防衛だったのは認めます。『耶万の夢』とかイロイロ、散蒔いたし。
「黙れ! 大人しく我らに従え。」
「断る!」
ソロソロ良いかな? ねぇ照、どう思う。みんな殺社に着いたかな。ん、マノさま。ニョロニョロと・・・・・・。
イケル!
コイコイ、残らず陸に上がれ。海から、港から離れろ。
壊れると困るんだ。作り直すの疲れるし、時だってタップリ掛かる。だからネ、怖がらないで。好い子だから。
「アコ。投げたら直ぐ引っ込めるから。息、止めてね。」
「分かった、投げるよ。エイッ。」
シュポッ。
ピュゥゥ、ドッカァン。メリメリメリィィ。
マツの種が着弾。と同時に発芽、生長。アッと言う間に、あの花が。
阿鼻叫喚、再び。
「ヨワイノガワルインダァァ。」
「シネェェ。クタバレェェ。」
マツの顔をした柱頭が叫ぶ。
ポンポン咲き乱れる大輪の花。逃げまどう人をペロリと舐めるように、花糸が伸びる。土の上に根を張り、伸ばされる枝は鞭のよう。
艶やかに舞うソレは行く手を阻み、伸びて縮んで吸い取って。
「たっ」 すけて。
「だ」 れか。
「お」 助けください。
グングン吸い取れ、ピラピラ飛ばされる骸。根からは菌糸か、ネバネバが出て搦め捕る。
シュワシュワ融けて、ドクンと脈打った。
「サラッテウル、ニガサナイ。」
「ダレニモワタサナイ。」
「オレノモノニナレ。」
浦を埋め尽くすほど居たのに、残るは名無しの王弟ただ一人。
食い残したのでは無い。戻り伝えさせるため、ワザと残したのだ。
「何と言うか、凄いね。」
マツの闇は深すぎて、一度では清められない。
ヨシの時と同じ過ちを犯さぬよう、アコは闇に手を加えた。力が及ばない時は包んで、ジックリ清められるように。
照に教わったワケでは無い。閃いた? 声がした? ような気がする。母さんが教えてくれたのかな。
「コレで終わると良いな。」
「そうだね。残ったら、鎮の西国に送ろうか。」
「照?」
もし攻めてきたら。なんてチョット思ったけど、怖いな。こんなの放り込まれたら滅んじゃうよ。
この力に溺れないように、しっかり生きよう。