8-258 口上を述べよ
ヒュゥッ、ボスッ。
「・・・・・・コレ、もしかして。」
「うん、マツの種だね。」
大きさは拳くらい。金色と黒のシマシマで、ズッシリ重い。今にも『ゴゴゴ』と鳴りそう。
「使えるの?」
「使えるよ。悪い事しようと攻め込んでくるのに投げつけて、サッと離れるんだ。近くに居ると巻き込まれるから、気を付けてネ。」
テヘッ。
「ねぇ照、どれくらい離れれば良いの?」
「そうだねぇ。ココからだと、今井くらいカナ。」
タイヘンだ! 急いで離れなきゃ。
光江に居るのは七人。社の司アコ、禰宜ザク、祝人頭ダイ、祝女頭リキ、育てヤヤ。継ぐ子のアサ、ユイ。
「落ち着いて、アコ。殺神に御頼みしよう。マノさま、お願いします。」
「分かった!」
ピュゥン。
「みんな、良く聞いて。これから真中の七国から、使いと兵が押し寄せる。その前に近海、殺社へ。」
「アコが残るなら、オレも。」
「イケナイよ、ザク。禰宜として、皆を頼む。」
「・・・・・・分かった。照さま、アコをお願いします。」
「戻った。行くぞ!」
マノが闇を広げ、六人を包んで消えた。
「宜しくお願いします。」
そう言って、アコが頭を下げる。
「海神、今です。」
「ウム。」
とりゃぁ!
風も無いのにスイスイ進んでいた舟が、いきなり止まった。グワンと波が高くなって、ドンと低くなる。
笠国、駒国、剛国、倭国。瀬国、飛国、保国。七国から集めた兵も舟も助かったが、何が起きたんだ?
「わっ、わぁぁぁぁ。」
「振り落とされるな、掴まれ!」
舟を囲うように、波の壁が立つ。グンと沈んで、ドンと押し出された。ピュゥ。いやビュンと進んで、アッと言う間に光江に流される。
「・・・・・・着いた、ようです。」
港にズラッと並んだ七国の舟。どう考えても、神の御業。
「行こう。」
ゾロゾロと、陸に上がる。
思ったより多い。こりゃ話し合う気なんて無いな。戦でも始める気かって、そうだった。ふぅ、落ち着けアコ。
「私は耶万の社の司、アコ。ここは光江、耶万に組み込まれた国の一つ。こんなにも兵を引き連れ、何事か。」
「私は倭国、王の弟。引け。」
・・・・・・投げちゃおうかな。
「戦を仕掛けるなら先ず、言の葉で伝えよ。」
「ハッ、子が何を言う。」