8-257 生長、早すぎ
話し合いの末、サッサと闇の種を植える事に決まった。
マツが犯した罪は見た者、聞いた者、証。それら全てが揃っている。
『罪を認めろ』とか『己が何をしたのか、分かっているのか』とでも言えば、毒づきながら認めるだろう。
「来た。」
アコの憑き蛇、照が囁く。
グワンと開いた闇からマツが落とされた。アサがコクンと頷き、アコが闇の種を植える。それからマノが、マツに魂を捻じ込んだ。
「・・・・・・グハァァ。」
戻った。
裁きだぁ? 子がナニ言ってヤガル。母チャンの乳でもシャブってろ。ん、何だ。虫が這うような、この感じ。気持ち悪い。
「光江の水門頭、マツ。己が犯した罪、全て明らかにせよ。」
ヤなコッタ。
「いつ、どこで、何をした。どれだけ奪い、どれだけ死なせた。」
知りませぇぇん。知ってても、言いませぇぇん。
「己が何をしたのか、分かっているのか。」
「ハッ。人を攫って何が悪い。攫ったのを売って何が悪い。オレは悪くない、悪くなっ。」
ゾワゾワゾワッ、ブチッ。ブチブチブチッ。
「なっ、んだぁぁぁぁ。グハッ。」
穴という穴から血が噴き出した。それから目玉が飛び出して、ゴロン。直ぐに伸びた蔦に弾かれ、ムキムキの茎に当たってベチャ。
物凄い勢いで育ち、ポンポン花を咲かせる。
コレデモカと開いた花弁から、ニョキニョキと花糸が伸びる。
柱頭はマツの顔。グニャグニャ動く花柱が、控えめに言って気持ち悪い。吸い寄せられる闇や魂が、嫌がっているように見える。
グングン吸い込み、花床が開く。プゥっと膨らむ子房まで禍禍しい。全く美しくないモノを見せられ、一同ゲッソリ。
「オレハ、ワルクナイ。」
「ヨワイカラ、シンダ。」
「サラワレルノガ、ワルイ。」
「オレハ、ミトメナイ。」
花が開く度、マツの声が響く。逃げ出そうと背を向けた魂が、ギッと睨んで振り返る。と、吸い込まれる。
裁きの場は、阿鼻叫喚の巷と化した。
ヴァン、ヴァヴァン。
闇の実が、物凄い勢いで爆ぜる。爆ぜる爆ぜる。耳を劈かんバカリのソレは、海社にも届いた。
「海神、遣り過ぎです。光の雨が降るまで、七国の舟を押し止めましょう。」
使わしめ、甲が叫ぶ。
「わ、分かった。そうするから甲、何とかシテおくれ。」
「どうにもナリマセン。」
ヒュッと甲羅に入って、プルプル。
キィィンと耳鳴り、クラクラして吐きそう。やっと降り出した光の雨を浴び、やっと落ち着いた。
「助かったぁ。」
耶万社の皆、ヘロヘロ。