8-255 放しちゃダメよ
スイ、コロ、キキの三人は裁きを受け、ちょん切り台で垂れ流している。次に裁くのは二人。光江の水門頭マツ、大野のガガ。
マツは吹出山、ガガは浅木の獄に入れられている。
「ガガは釜戸山で、玉と根を切り落とされた。浅木では心と体を切り離され、聞き分けの良い幼子のよう。つまり、死んでイナイだけ。」
アコの話を黙って聞いていた社の皆、ポカン。
「『耶万に引き渡すまで死なせるワケには』と、闇に守られている。だから先ず、マツから裁こうと思う。」
追加説明を聞き、パチクリ。
「みんな、聞いてる?」
アコに問われ、ハッ!
「うん、良いと思う。ガガの魂って、元に戻せるの?」
禰宜ザク、ニコリ。
「好きな時に戻せると、浅木の祝が。」
・・・・・・浅木の祝、スゲェ。
「ねぇアコ。ガガは分かったけど、マツはドウやって運ぶ?」
祝女頭、リキが問う。
「うん。ソレなんだけどアサ、闇の力で運べないかな。難しいなら、そう言ってね。」
「闇に引き込んでポンと出せます。だから出来ると思うけど、死んじゃうかも。と、思います。」
シュンとして、キリッ。
マツは吹出山の獄に繋がれ、休みなく刺さる言の葉の刃に耐えられず、今にも心が砕けそう。
闇に囚われ動けない魂を清めるため、何としても耶万で裁く。砕ける前に引き摺りだし、痛めつけ罰しなければ。
「じゃぁ、魂を切り離そう。出来ますよね、マノさま。」
祝人頭ダイ、ニッコニコ。隠れて聞いていたのにバレました。
「ウム。アコよ、ドコで裁く。囚われた魂の多くは、光江に集まって居るが。」
戦に敗れ、耶万に組み込まれた国は多い。
采、安、大野、安井、久本、井上に集まっていた魂は纏めて、耶万神より清められた。けれど・・・・・・。
「救いを求めて集まった魂も、諦めて光江に。」
アコがボソッ。
大祓の光に吸い寄せられるように向かったが、間に合わなかった。清められずに取り残された魂は、常世の国を目指す。
海神に阻まれ、押し返される。
そういうワケで光江は今、身動き出来ない魂や闇の『溜まり場』なのだ。
「アコ、気にするな。魂を切り離されたマツを、アサが光江に運ぶ。ソレで行こう。」
育てのヤヤに言われ、アコが笑った。
「軽いよ。」
出来ないと思うから出来ない、難しいと思うから難しい。ヨシ、出来る。難しくナイ!
「始めます。」
キリッとして、闇に飛び込んだ。
耶万から西へ。大石と会岐の国守が、闇で道を示してくれる。そのままグングン進めば、吹出山の麓に着く。
あの山は許し無く入った闇を、根の国へ送り込むから危ない。マノさまと行かなきゃ。
「アサ。コッチだ、コッチだよ。」
「マノさま。お待たせしました。」
『黄泉平坂って落ち着くなぁ』なんてコト考えながら、フワフワ浮かぶマノの尾を持ち、トコトコ進む。