5-4 守るなら、全力で
ブランは思った。なんと愚かな。いっそ、滅んでしまえ! と。
王命により、霧雲山の統べる地を監視中。どんな任務も遂行する。放棄するなど、有り得ない。
しかし、思う。いくら劣るとはいえ、すべての祝辺の守が組めば、支配できるはず。なのに、なぜ。
化け王なら、一瞬。廃品を分類。再構築の後、民を戻す。法を整備し、内乱を阻止。
教育、勤労、納税を義務づけ、自由を認める代わりに、行動および発言に責任を負わせる。
果たさぬ者は拘束し、処罰する。例外は、無い。
無能が治める地など、地獄。民を不幸にする王など、必要ない。力を持っていながら使わないなど、傲慢にも程がある。
白子ゆえ突き殺され、転生した。鷲なのに、白い姿。鷲なのに、赤い目。だから、何だ!
罵られる度、奪った。見下される度、奪った。敵意を向けられる度、奪った。
奪って、奪って、奪い続け、疲れた。そんな時、カー様に出会った。
罵られても、見下されても、敵意を向けられても、悠然と構え、微笑む。
なぜ、奪わないのだろうと、心の中で呟いた。
「言わせておけば良い。」
氷のように冷たい瞳。つつみこむような、温かさ。この御方に、お仕えしたい。
「我に仕えよ。」
誇り高く、美しい王。その配下となって働く。夢のようだ。
訓練は辛く、厳しかった。試験に合格し、鳥類初の臣下となった。その上、王直属の諜報員だ。文字通り、舞い上がる。
地上に下りると、干し肉が下賜された。『お祝いだよ』と。嬉しかった。
カー様。化け王は、民を守り導く”名君”だ。大王とは大違い。鳥の頭でも分かる。
大王は欲深かった。隣国を手始めに、次々と他国を攻めた。
カー様は第五王子。だから化け王なのに、戦場へ駆り出された。従兄君と共に。
エン様には、不死の才が。死なないだけで、死ねない。カー様は、エン様を守るため、決められた。
「ブラン。エンを、頼む。」
警護の任を賜った。
本当は、離れたくなかった。ずっと化け王城で。カー様の御側で。
戦争が嫌いだ。
差別、迫害、貧困。不平、不満がブスブスと。紛争の火種になるのに! 紛争の絶えない地域から、戦争が始まるのに!
この地のヤツら、嫌いだ。
守るなら、全力を出せ。カー様を頼るな。
他国の王だぞ、化け王だぞ!




