8-252 皆さん、宜しいか
「いつ、どこで、何を。」
アコの後ろに五人。禰宜ザク、祝人頭ダイ、祝女頭リキ。育てのヤヤ、継ぐ子アサが控えている。
「待て! 何かの間違いだ。」
スイが叫ぶ。
コイツ、何を。裁きを始めるだと? オレが何をした。悪い事なんて、何も。・・・・・・したな、イロイロ。
蛇谷から祝を攫ったのも、大王に差し上げたのもオレ。ケッ。生まれる前の事だろう、知らないクセに何だ。大王の倅だからって、イイ気になるな。
どうせ何も知らないんだ、証も無い。見たの聞いたのは皆、死んだ。生き残りで知ってるのは、オレたち三人だけ。
クックゥ、愚かだねぇ。耶万の大王はオ・レ。死んだ大王の倅ってダケのテメェにゃ、手出し出来ねぇよ。
「人の心が残っているなら、犯した罪を全て。」
「アコよぉ、証は有るのか。」
コロがニヤリ。
有るワケねぇ。攫った祝は女も男も、残らず死んだ殺された。オレたちに。
タクはな、良い社の司だったよ。巫や覡を使って、大王や臣、頭どもを騙したんだ。
ヤツらにゃ、何の力も無い。踊って叫んでオカシクなったフリをして、求められる事を言ったダケ。『神の御許しが出た』って言いながら、シメシメと笑ってたぜ。
今のは使えねぇ。『女を攫って来い』って言っても、『オレは狩頭だから、誰も攫わない』だってさ。狩り人なら女くらい、搔っ攫って来いよ。
送り込まれた大臣が帰ったら、オレが狩頭になる。大臣と狩頭をヤレルのは、オレくらいさ。クフフ。
「話す気は無い、と。」
「知ってても言わねぇ。」
キキが鼻で笑う。
言うワケ無いだろう、抜けてんな。
オレは釣り人スイは水手、コロは狩り人だ。釣ったり狩ったりして集めた獲物を、舟で運び込む。どんな流れもスイスイさ。名の通り、イイ水手だぜ。
臣になったんだ、好きに生きられる。アコ、良く戻った。万十と氛冶の大臣も、連れ込んだのを引き連れて、国に帰るだろう。
にしても、イイのが戻ったなぁ。ガリガリだったのによぉ。胸がプルン、尻がプリッ。どれも楽しめそうだ。グフフ。オッとイケナイ、涎が。
スイたち三人は知らない。目の前に居る五人とも、祝の力を使えると。
アコは己の闇を切り取り、守りの力で包んで貰おうと、丸めてヤヤに渡した。耳に入れても良くなると、ダイの手に。癒しの力で痛くナイようにして、皆に手渡す。
キュキュッと耳に入れ、声が聞こえるか試した。
ザクには心の声を聞き、伝える力が有る。アコの闇は遠く離れていても、音を拾って伝えられるから、ザクが拾った声も届くハズ。
届いた! 耳がキィィンとなったら、ザクの力を抑えて、リキに清めてもらう。続けて使うと疲れるが、繰り返し使える。
「皆さん、宜しいか。」
コクリ。
「耶万の大王スイ、大臣コロ、臣キキ。三人のタマと根を切り取り、耶万の奴婢とする。」
「待てアコ。これは裁きだろう、オレたち誰も、認めて無いぞ。」
「黙れスイ。加えて、闇の種を植えつける。皆さん、宜しいか。」
五人とも頷き、ニッコォ。