8-251 裁きを始めましょう
思ったより酷いな。あんな男に王、それも大王なんて務まらない。荒れ果てた耶万の立て直しは、とっても難しいんだ。迷うな。
ヨシを清められなかったのは、闇が薄かったから。今のオレならイケル。社の司として、人の長として戦うと決めたんだ。
「アコ、どうした。」
「何でもないよ。ありがとう、ダイ。」
母さん、見守っていてね。悪いヤツに闇を植えつけて、光に変えるよ。オレになら出来る。だって、母さんの子だもん。
「スイのヤツ、前より酷くなったな。」
「ザクも、そう思う?」
「思う。なぁ、ヤヤ。」
「アイツら、オレたちを見て言ったんだ。『使えそうだな』って。リキの・・・・・・、ジロジロ見てたし。」
「舐め回すようにジッと見て、『試してやる』だって。鼻で笑ってから『縊り殺すぞ』って言ったら、慌てて逃げた。」
「タマと根、切り落とそうぜ。」
「オレたち、大稲で習ったんだ。」
ダイとヤヤが胸を張り、ニコリ。
「オレたちも習ったよ、大倉で。」
ザクとリキ、見合ってニッコリ。
習ったが試した事は無い。
これからは耶万でも、偏らず裁く。ココは人の国、盛りのついた獣は要らない。野放しにせず取っ払い、死ぬまで扱き使う。そのために学んだ。
「これまでの調べでスイ、コロ、キキが女を。」
ギリッ!
「裁こうじゃないか。根が無きゃ女は殺されない。女を傷つけ、心を殺すような男は消す。」
アコから、闇の炎がメラメラと。
スイは大王、コロは大臣、キキは臣となったが、三人とも人では無い。人なのだがヒトデナシ。多くの人を嬲り、弄び、命を奪った。
使い捨ての具として生かしているダケ。付いて無くても良い。耶万の事を思えば、無い方が良いだろう。
「巫や覡はアテにナラナイ。離れに置くけど、飼殺す。祝の力が有るのに出せない子は、ゆっくり休ませる。」
「そうだな。残る継ぐ子、となるとリキ。誰が良いと思う?」
「アサならシッカリしてるし、良いと思うけど。」
アサはダイと共に、大稲に逃げた子の一人。清めの祝女と、祝人の間に生まれる。母は産んで直ぐ。父は三つだったアサを守ろうとして、巫と覡に嬲り殺された。
飛び散った脳がアサの顔に当たった時、清めの力が闇の力に変わる。
父の教えを守り、祝の力を使い熟す器が出来るまで、隠し通した。獲物の足元に闇を開き、取り込んで魂を抜く力を持つ。
「良いと思うよ、アサも習ったし。なぁ。」
ヤヤがダイに、話を振る。
「あぁ。オレたち、三人で習ったんだ。」
アコは社の司として、大臣ら三人を呼び出した。『話し合おう』と言って。
「ナッ、何をする。」
三人ともアサの力で、腰まで闇に沈む。
「裁きを始めましょう。」
アコの目が、ギラリと光った。