8-250 穴があったら入りたい
耶万社の継ぐ子たち。親から託された子を引き連れ、続続と戻る。
初めに着いたのは、ザクとリキ率いる大倉班。次に着いたのは、ダイとヤヤ率いる大稲班。
東を目指した人も、多くが助かった。万十が狩り人を出し、探していたから。川を下った人は、海まで出られれば助かった。大浦と近海が、探しに出たから。
耶万から逃げるよう、伝えられたのに残った人は死んだ。ザクたちが逃げ出したと知り、慌てて飛び出した人の多くが、行倒れた。
海まで行けなかった人たちも、残らず死んだ。光江や悦に捕まり、真中の七国へ送られて。
「アコ・・・・・・。アコだ、アコが戻った。」
ヤヤが大声を出し、皆を呼ぶ。
「おかえり、アコ。」
タッと駆け寄り、抱きしめる。
「ただいま、リキ。」
中の東国は閉ざされているが、統べる地は開いた。鎮の東国に南国、四つ国も同じ。内だけ開いたのだ。
統べる神が議られ、御決め遊ばす。『鎮の西国、中の西国、真中の七国。開いている三つから、悪しきモノが全て滅びるまで開かぬ』と。
よってアコは良那の国守、オトに連れられ、耶万に戻ったのだ。大倉や大稲など、妖怪の国守が居ない国は、使わしめが付き添った。
耶万社では、饗応の真っ最中。嫌呂と悪鬼は、手伝いながら情報収集。
『耳と目で、得られる全て持ち帰る』
コンコン、心の俳句?
「スイ。良那から継ぐ子か戻った。」
狩り人だった耶万の大臣、コロ。
「はぁ? 寝言は寝て言え。」
水手だった耶万の大王、スイ。
「オレもコロも、起きてるよ。」
釣り人だった耶万の臣、キキ。
死んだ社の司タクが、良那に病を撒くために送り込んだ。大王の子だから生かされてたダケで、追い出されたんだろう。確か、そう聞いた。
戻るワケない、死ぬだろう。真中の七国とかに、散蒔かれたヤツだぞ。祝の力が無いから捨てられたんだ。
あれ? 違ったっけ。
頭がガンガンする。靄が掛かったような、ヴッ。気持ち悪い。オカシイ、オレ何か悪いモンでも食ったかな。
陸に居るのに揺れてる。歪んで見える。
「オイ! 聞こえるか、スイ。シッカリしろ。キキ、誰か呼んできてくれ。」
「分かった。」
コロが駆け出す。
スイは王の剣を探して、『耶万の夢』が隠してある倉に夜、灯りを持たずに忍び込んだ。幾ら月が満ちていても良く見えない。
手探りで進み、何かを引っ繰り返した。
頭から浴びたソレは、ずっと前に風見から納められた、いろんな毒の残り。剣を探しに入ったら、トンデモナイ事に。
吸い込んだダケなので、死にはしない。けれど暫く、苦しむだろう。
「アレが大王ですか。」
大稲神の使わしめ一、大倉神の使わしめ雨雲、殺神の使わしめ海布。三蛇、仲良くボツリ。
「お恥ずかしい。」
『穴があったら入りたい』と思う、耶万神の使わしめマノ。黒蛇なのに、顔が赤い。