8-249 戦など、無くなれば良いのに
「もうすぐ春だね。」
「そうですね。」
社でノンビリ、コンコンず。
耶万の大王スイが『オレの剣を出せ』と煩かったので、狐火で焙った。まだ諦めないが、騒げばコンガリ。
やっと大人しくなりました。
スイはアレでも、コロとキキはシッカリしている。アコが耶万に戻っても怠けず、良く働くでしょう。うんうん。
「アコの闇、風見まで届いたんだって。」
「わぁぁ、凄い。」
ポムッと肉球タッチ。
集山から戻ったアコは力を強めるため、照に教えを乞うた。話し合いの末、向山に籠る。
隠の世が閉ざされているので、オラオラな隠も妖怪も出ない。それでも厳しい所に身を置くことで、ギリギリまで研ぎ澄まされた。
良那に戻ったアコは、社を通してから試す。『浅木に届くとイイな』とは思ったが、実山と早稲まで届いた。
それはもうビックリ。
浅木、実山、早稲。三社から強く勧められ、風見まで飛ばす事に。御許しを得てからエイッ。届きましたよ、風見まで。
ビックリを通り越して、アングリ。
「耶万に戻る頃には、大貝山まで。」
「届いちゃうカモ。」
キャイキャイ。
「・・・・・・ハァ。」
「大貝神?」
春になれば真中の七国が攻めてくる。鎮の西国、中の西国からもワンサと。
人は減ったが、耶万は耶万。冬の間に強めたトカ。
何が『耶万の夢』だよ、毒でしょ毒。早稲や風見なら、そこまで気にならない。扱い慣れ、心得ている。けれど耶万はイケナイ。
「どれだけ奪うのだろう。」
「毒を強めようにも、いろいろ足りません。」
デキル使わしめ土。ピピピと推し量り、導き出した。悩まし気な面差し、御声の感じ。『耶万の夢』について御悩みなのだろう。
「そうなのか?」
「はい。風見から草も花も届かず、海の毒も手に入らない。全て揃わなければ、どうにもナリマセン。」
「それは良かった。」
大正解! 戦では無く、毒の話でした。それはサテオキ、どのように戦うのでしょう。『耶万の夢』が無ければ、厳しい戦いに。
妖怪の国守? 出ませんよ。耶万では無く、生まれ育った地を守りますので。
「アコの力が良那から、風見まで届いたのは真か。」
「はい。使わしめの集いでスオさま炭さま夕日さま、実さま黒目さまにも確かめました。」
ニコッ。
良那から浅木、実山、早稲、風見まで届いたとな。末恐ろしい。そのうち耶万から大貝山、まで? 良いではないか。
この辺りは平らで暮らし易い。なのにナゼか、春から秋まで戦場になる。丘の上に小さな社があるが、祝どころか禰宜も、社の司も居ない。
「戦など、無くなれば良いのに。」
大貝神、溜息まじりにポロリ。