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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
764/1585

8-248 異議無し


フンフンと御機嫌な大蛇おろち。使い鵟は黙って、後に続く。



プイッとされ気をんだが、良かったヨカッタ。めぐし子さまサマだ。


津久間だって清らだが、この山にはおとる。蛇神がくほどの子。さぞや、と思ったが凄かった。なんてコトを考えながら、スイィッ。




集水神あつみのかみからの知らせ、詳しく聞こう。」


和山社なぎやまのやしろにて、神議かむはかりが始まる。




驚いた。人の子から切り取った闇から、妖怪の闇が見つけ出されたのだ。しかも昔、矢箆木社やのきのやしろから告げ知らされた闇と、ピッタリ同じだと言う。



しづめ西国にしくに儺国なのくにの果てに広がる矢箆木沼やのきぬま。底なし沼とも、毒吐き沼とも呼ばれる。


広い地のアチコチから噴き出す毒は、泡の中。浮かんでは消えるソレは、多くの命を奪い続ける。



獣や人が死ぬ事は無いが、毒で死んだ魚を食らえば死ぬ。扱いに困るむくろが投げ込まれるので、飢えた妖怪には暮らしやすいトカなんとか。


猫神に仕えるおにの祝、ミツの骸が投げ捨てられたのも矢箆木沼だ。




「矢箆木沼の妖怪は確か、郡山の墓場に。」


呟くように、熊啄木鳥神くまげらのかみ


「はい。闇を宿せば直ぐ、沼に引き摺り込まれます。」


ハキハキと、猫神。



保ち隠、とうは守りの力を生まれ持つ元、祝女はふりめ日乞ひごいの生けにえとして、濁った流れに飛び込まされ、溺れ死んだ。


流れ着いた矢箆木沼に力を保ったまま沈み、猫神に拾われ保ち隠となる。



叨は落ちて来た妖怪から闇を切り取り、壺に納めて月に一度ひとたび、矢箆木社に持ち込む。調べが済めば戻され、持ち主の魂と共に葬られるのだ。



「犬が宿した闇と、全て合うとは。」


溜息まじりに、狗神。


「考えられるのは、呪いか。」


ボソッと、烏神。


「願いを叶えようと、生け贄に。」


続けて、狐神。



野山で生きるのはやまいぬ、人と生きるのが犬。


大好きな人と暮らしたい、役に立ちたい尽くしたい。そんな思いを踏みにじり、憎しみを抱かせるようなぶり殺され生まれるのが、犬の妖怪。



妖怪が人と契っても、その幸せは続かない。妖怪は長生きするが、人は直ぐ死ぬ。子を残しても同じ。


人が生きている間は良いが、残された妖怪は好いた人を葬り、少しづつ狂う。



生まれるのは人とも妖怪とも違う子。顔は人でも耳は犬とか、顔は犬で体が人とかイロイロ。


まれに人の姿で生まれるが、むごたらしい事を好む。残された子は構ってもらえず、心に闇を宿やどすのだ。




大蛇神おろちのかみよろしいでしょうか。」


キュルンと、猫神。


「ウム。」



叨に確かめ、闇の主を調べました。その妖怪は人の姿をしていたので、人のときへ出ます。狩り人として認められ、一目惚れした娘と契りました。


生まれた子も人の姿だったのですが、牙が。妖怪だと知られ、耐えられなかったのでしょう。逃げるように矢箆木沼へ。



妖怪の墓場に葬られたのです。良那のヨシは、残された子の先祖でしょう。闇がピタリと合ったのは、男の血筋だったから。


他には考えられません。



「闇は持ち出された物では無かった。引き続き、狭間はざまの守神に任せようと思う。皆の考えは。」


ワイワイ、ガヤガヤ。


おおせのままに。」


しばらくして、満場一致で可決された。


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