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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
762/1584

8-246 困ったね


恐ろしい事になった。大貝山の統べる地、それも耶万やまから闇が溢れた。耶万神やまのかみぐ、清めなさったが。



「土。闇喰らいのつるぎから、何か感じるか。」


「いいえ。糸にも変わり有りません。」



グルグル巻きにして埋める前、神倉ほくらに一本、地蜘蛛の詰所にも一本コッソリ繋いだ。糸が解けたりしぼんだりすれば、ビビッと直ぐに分かる。



つるぎには変わり有りません。けれどアチコチから、耶万に向かって闇が。」


「集まって。いや、吸い寄せられたか。」



うね、悦、大野、光江、安。どれも耶万に滅ぼされ、組み込まれた国。


重罪を犯し、処罰されたヤツの国。足りなくなって送り込まれ、人が少なくなった国。送られた食べ物を横流しして、多くの人を飢えさせた国。




生き残りは売れ残り。親と生き別れ、もしくは死に別れ、一人で生きてゆけない幼子おさなご。痩せこけた子、年寄り。



若い人が居らず、田も畑もボロボロ。耕そうにも力が出ない。食べる物が無いから。水をむ力も無く、這い出て雪を口にする。家に戻ってもまきが無い。


雨風をしのげるだけマシだが、とても寒い。



「死んだ人が根の国へ行かず、とどまって。」


「はい。妖怪になっても生きられず、朽ち果てたのでしょう。」



何も考えられず、ピクリとも動けず、ドロドロに腐って闇に飲まれた。解らない。なぜ人は傷つけ、奪うのだろう。なぜ分け合わない、分け与えない。


耶万から届けられた食べ物を分け合えば、生きて春を迎えられた。人として生きられたのに、なぜ。



いくさに敗れ滅んでも、耶万に組み込まれ残りました。五つの他は立て直し、ちゃんと生きています。」


「土、私はね・・・・・・。大貝山に人が居なくて良かったと、心の底から思うよ。」



『そんなコトを』なんて言えません。私も同じ考えです。






「困ったね。」


「はい。お許しいただければ、直ぐに。」


「イケナイよ、マノ。」


ニコッ。



耶万に闇が集まっている。渦巻く前に清めているが、こうも続くと考えてしまう。王の首をげ替えようと。フフッ、マノが知ったら怒るかな?


今のところ、神倉は清らなまま守られている。このやしろから溢れない限り、届く事は無い。人のときの闇なら。



水引神みずひきのかみの使わしめは蛇、だったね。」


「はい。隠の蛇、美水うみさま。水引の谷からは御出にならないと昔、蛇の集いで聞きました。」


ニコニコ。




狭間はざまの守神は闇を切り取り、調べた末を持ち寄ってはかられるとか。確か望日もちのひに、和山社なぎやまのやしろで。


ん? アッ、分かった。闇を切り取って壺に御入れ遊ばしたのは、いつか御調べ願おうと。



でもなぁ。水引の谷が在るのは、津久間が統べる地。ココは大貝山の統べる地。どちらも閉ざされてる。困ったな、うかがえないよ。どうしよう。




「ありがとう、マノ。」



ナンだカンだ有りますが、耶万は今日も平和です。


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