8-245 闇を調べよう
生まれつきのワルは居る。誰が、どのように育てても、どうにもならない。豊かな国で生まれ、慈しみ育てられても歪む。
早稲のタツは悔いた。良那のヨシは諦め、死を受け入れた。
腰麻のアキは救いようが無い。アンナとマリィに食われても、抗い続けた。己を切り取り切り分け、人に植えつけ残した。
直ぐに消されたが。
良い人も居るが、人は恐ろしい。これから先、どれだけ多くの闇が溢れるのだろう。考えたく無い。けれど、向き合わねば。
「何とか。」
「えぇ。けれど。」
「気になりますね。」
集水神、水引神、誘神。三柱は狭間の守神。
望日、和山社に集い座して議られる。やまとに渦巻く闇を切り取り、調べた末を持ち寄り、推し量るために。
隠の世が閉ざされ、和山社に集えなくても議る事は出来る。鎮の東国、中の東国、南国、四つ国は、それぞれの地で。
鎮の西国、中の西国、真中の七国は出雲、木俣社で。
中の東国では霧雲山、鎮野社にて神議り。
根の国へ繋がる道の出入口を守り、取り仕切る神で在らせられる。山守も祝辺も手を出せない。
耶万で溢れた闇には他と違い、根の国の闇が混じってた。だから、あれ程の大祓を。
この度、集山での大祓。ヨシが宿した闇は、これから調べる。けれど、あの濃さ。
「耶万の神倉に納められた、闇喰らいの剣。」
「大貝神の使わしめが、包み直したと聞く。」
「大蛇神の抜け殻は、使えぬのか。」
三柱の御考えは同じ。地蜘蛛の大妖怪とはいえ、土は使わしめ。神の御業に比べれば可愛らしいと言うか、控えめと言うか。
「鵟神に御願い申し上げ。」
「確かめると?」
「・・・・・・アコが戻る前に、一度。」
蛇谷の祝の子だが、春になれば社の司として戻る事が決まっている。耶万を立て直すため、力を尽くすだろう。
アコの他にも、祝の力を持つ子が四人。万十や氛冶、良那に岸多、浅木も付く。
困った事に耶万の王、スイは狙っている。人の世では『王の剣』と呼ばれる闇喰らいの剣を。あの男が叢闇の品を知れば、全て求めるだろう。
その時、動けるのか。
「この度、清めきれなかった事。」
「気に病んで居る。」
「強いたくは無い。」
闇に魅せられたスイには、直ぐにでも闇を。とは思うが、決めるのはアコ。
「急ぎ闇を調べ、明らかにしよう。」
「あれこれ悩むのは、その後に。」
「そうと決まれば。」
「動いたな。」
愛し子マルに早く会いたい、大蛇神。
「大蛇神。一度、狭間の守神を社へ。」
キリリと、鵟神。
「鎮の西国は郡山、猫神。中の西国は因幡、兎神。真中の七国は粘網山、蜘蛛神。狭間の守神に急ぎ『闇を調べ、伝えよ』と。他は通さぬよう、頼む。」
蜷局を巻きなおし、大蛇神。
「はい。」
キリッ。