8-235 問題なのは
大貝社、大騒ぎ。
統べる地で、数多の妖怪が生まれたのだ。人から生まれたのでは無い。闇に魅せられ、妖怪に堕ちた。
セッセと受け付け、割符を渡す。大貝神も土も、使い蜘蛛もヘロヘロ。駆け付けた社憑きと代わり合いながら、何とか捌いている。
「これで全てか。」
脱力なさる、大貝神。
「はい。隠の世での暮らしを望む妖怪は皆、手続きを終えました。」
フラフラする使わしめ、土。
和山社も賑やかです。
使い隠から齎される知らせを、詳しく調べて明らかに。今は冬。隠神だって、ノンビリしたい。けれどキビキビ働きます。
「中の東国、大貝社の統べる地。隠の世へ移り住む事を、強く望む妖怪。その全て、割符を手にしました。」
使い隠たち、キリリ。
「そうか、ありがとう。」
サッサと済ませて、大蛇社へ戻りたい大蛇神。ニコリ。
大貝山の統べる地で生まれた妖怪は、そんなに多くない。いや多くの隠が妖怪になったのだが、大祓により清められたのだ。
つまり、大祓の生き残り。
問題なのは鎮の西国、中の西国、真中の七国。まさに妖怪、誕生ラッシュ。
幼子なら慈しみ育て、厳しく躾ければ良い。けれど見た目が大人なら? とても扱い難い。
「鎮の西国にて、のさばる妖怪。瓢の妖怪が狩り尽くしました。」
二妖一組で、協力ハンティング。
「狩った妖怪は闇に入れられ、王の闇へ送られているようです。」
瓢の王、滑。支配する闇に入れられた食糧を、凍結乾燥する力を持つ。消費期限は無く、湯を注ぐ事で美味しく食べられる。
大社との外交に失敗し、結ばされた不平等条約。やまとが存在する限り、条約改正は勿論、不平等条項の撤廃も出来ない。
『異なる国の民』として、生き続けるのだ。
不服を唱えると思われたがビックリ仰天! 瓢は興奮のルツボと化す。まさに狂喜乱舞。『素晴らしい条約だ』と、感謝の祈りを捧げた。
皆で鎮の西国、人の世の果てに与えらえた地へ御引っ越し。弾けるような笑顔で、仲良く幸せに暮らしている。
「話を聞いた時は驚いたが、収まりそうで良かった。」
シミジミと、兎神。
「瓢が置かれたのは、人の世から闇が流れ込む地。」
ニッコリと、蝙蝠神。
「田畑で育てた物にも、闇が宿る。」
牛神もニコリ。
『頼りない上司を持つと、部下が育つ』なんて言わないで。大国主神は稻羽に、全幅の信頼を寄せているのです。
丸投げ? イエイエ、違います。
「何れにせよ、闇が清められるまで開かぬ。」
そりゃそうだ。
「気掛かりは、耶万のスイ。」
まだ狙ってます、闇食らいの剣。
「アコが戻るまでは生かすよう、伝えたが。」
嫌呂たちの報告によると、かなりアブナイようで。
「闇を使い熟せるまで、もう少し掛かるだろう。」
楽しみですね。
「隠の世から、見守ろう。」
よろしくお願いします。