8-234 応援してるヨ
中の西国は、東国より暖かい。にも拘らず、驚くほど積もった。大社のある出雲だけ。
ナゼかって? 冷え冷えしているからデス。
「この度の事で分かった。隠の世にっ。」
「隠の世に、何です。」
メラメラメラ。
「そ、の・・・・・・。」
冷や汗、ドッバァ。
激しく燃え立つ気持ちを、思うまま語り合いたい。なんて御考え遊ばす、大国主神。
気持ちが譬え一時でも、他に向くなんて耐えられない、須勢理毘売。
「い、稻羽ぁ。」
「つい先ほど、木俣社へ。」
ジトォ。
「そう、だったナ。ハハハ。」
修羅場と化す? 杵築大社。使い兎、後ろ足をタシタシ。
「寒かったろう。さあ、こちらへ。」
「はい。」
木俣社でユッタリと過ごす稻羽。この度は、御使いではアリマセン。実は判ったのです。耶万から溢れた闇は、隠に闇の力を授けると。
会岐のフタ、大石のクベ、加津のミカ、千砂のモトなど。大貝山の統べる地に居る、妖怪の国守たちは皆、そう。
そもそも、闇を操る妖怪は珍しい。良那のオトくらいだ。多くは闇に飲まれ、魂ごと乗っ取られる。腰麻の国守だった四姫、アキのように。
「耶万の闇と、こちらで溢れた闇の違い。何だか判るかい。」
・・・・・・アッ。
「そう。耶万の闇には、祝が関わっていた。」
社に認められた新しい妖怪は、クベとミカの二妖だけ。耶万でタヤから直に、力を分けられた。だから他の妖怪とは、闇の深さと強さが違う。
タヤの闇に選ばれた妖怪は、他にもワンサと居る。隠の世が開くまで、隠れる事にしたのだ。『耶万の夢』により死に絶え、残された地でヒッソリと。
「大蛇神は直ぐにでも、受け入れたいと御考えだ。けれど今、隠の世を開くワケには。」
「そうですね。もし開いたら、押し寄せるでしょう。」
和山社での議りで、受け入れが決まった。
保ち隠だけでは、とてもじゃないが捌き切れない。だから人の世で受け付け、割符を手渡す。
隠の世は、大貝山の統べる地から開く。割符を手にした、妖怪の身を守るため。
潜んでいる妖怪の多くは、手続きを終えた。残りは見つかるのを恐れ、逃げ回っている妖怪。
大貝山の統べる地からは、決して出られない。だから土の使い蜘蛛が風に乗って、飛び回っている。
「いつ、開くのでしょう。」
「ずっと先に、なるだろうね。」
人から生まれた妖怪が、人の世から消えるまで開かない。古の隠神は御考えだ。『隠の世に、人の世の禍など要らぬ』と。
「瓢の民に頼るより他、ありませんね。」
遠くを見つめ、稻羽が呟く。