5-2 最果ての地
風見が荒らした地は、畏れ山の統べる、最果ての地。そんなコト、人には関係ない。
風見に滅ぼされた村の人々は、遠く離れた畏れ山ではなく、近くにある魂迎湖を崇めた。
魂鏡社へ参る人が、どの村の人なのかなど、些細な事。来るもの拒まず。すべて、受け入れ、その結果。
魂鏡神は嘆き、苦しまれた。断末魔の叫びが、耳から離れない。くりかえし、くりかえし。
統べる地を越えるだけなら、許される。しかし、手出しは。
断られると分かっていたが、ハクは向かった。霧雲山、祝辺へ。
「で? 私に何を、どうしろと。」
「滅ぼされた村を、清め・・・・・・。」
「聞く限り、魂を奪われ、戻れぬ。それを、清める?」
・・・・・・それは、そう、なのですが。
「魂は、すでに清められた。」
・・・・・・えっ。
「悪しきモノ。霧雲山の統べる地、魂迎湖に。」
・・・・・・なっ、何だって?
奪った魂を代償にして、霧雲山の統べる地へ。叶ったものの、奪った魂を、すべて失った。その上、魂迎湖に秘められた力により、干乾びる。
魂を奪おうにも、村どころか、人っ子一人、いない。ならば獣・・・・・・。
魂迎湖が、根の国に繋がっている。そう信じ込んでいるのは、人だけではない。獣が少なければ、狩り人も少ない。追われなければ、近づかない。
魂鏡社の人を狙うも、ことごとく失敗。水の神に仕える人々。その魂は清らかで、奪えない。
「ハク。人々の魂は、清められた。嘆き憂うことなど、ない。」
思い切って、願い出よう!
「叶わぬ。諦めよ。」
お見通しですか。そうですか。そうですよね。
「が、な。ハクよ。」
山守神の仰せにより、祝辺の守が畏れ山、火炎神の社へ。
血の気の多い山神は、愛犲家。モフモフを邪魔されるたび、派手に暴れる。山から流れる畏れ川まで、荒荒しい。
統べる果ての地で、何が起こったのか。御知りなされた火炎神。スッと涙を流され、仰った。
『統べる地で暮らす人人も、犲と同じくらい、慈しむ』と。
ハクは平伏す。神は、御守りくださる。いつも、いつまでも。
ちなみに。畏れ山、火炎社へ遣わされた祝辺の守とは?
熾烈な押し付け合い、もとい。厳正な審査の結果、ひとつ守。つまり、初代。涙を呑む。
決まったからには、尽くすのみ。そして・・・・・・任務完了。
お疲れさまでした。




