8-232 お里が知れる
何だよ、何なんだよ。オレ、良那からの預かりモンだろう。
確かワカって、大臣の次に偉いんだよな。そんな臣が、早稲の長に頭を下げた。なのに何だ、この扱い。
信じらんねぇ。どう見てもココ、獄だぜ。獣でも入れてたのか? 臭いし狭いし寒い、凍えちまう。殺す気か!
「腹減った、何か食わせろ。聞いてんのか、オイ。」
・・・・・・。
「誰か居ないのか、何か言え。アッ。」
日が隠れて何も見えない、真っ暗だ。耳が痛い、熱が奪われる。こわいコワイ怖いよ、助けて。誰か来て。
「親の言い付け破って、弟を殺しかけたって?」
「目障りだったのか?」
「構ってもらえなくて、消そうとしたか?」
「ヒデェ兄だな。」
「腐ってんだろう。」
誰だ何だドコに居る、出て来い。姿を見せろ。オカシイぞ、声が出ないし動けない。目が慣れて、白いのがボンヤリと・・・・・・。
「ヒィッ!」
浮いてる透けてる、死んでるぅぅ。早稲に殺された人が、根の国へ行けない人がココに集まって。それで、それで。オレを食うのか、食われるのか!
助けて、誰か助けて。言い付け破って、ごめんなさい。良い子になるから許して、お願い。お願いします、助けてください。
「オイ、夕餉だ。冷める前に食え。」
隅っこで頭を抱え、ブツブツ言うヨシ。幾ら呼んでも取りに来ないので、カツが雪玉を投げつけた。
軽く握ったソレは肩に当たり、ハラリと砕ける。
ユックリと顔を上げ、パチパチ聞こえる方を向く。手火を持ったカツと目が合い、声にならない声を上げて近づく。
「あ、うえっ。いあ、あぁ。」
そんな目で見るな。オレが何したってんだ、会った事ない知らない。来るな、来るな、来るなぁぁ!
誰も殺してない、殺した事ない。オレは子だ、まだ子なんだ。だから許せよ、許してよ。お願いだよ、誰か助けて。
「『助けて、嫌だ』だと? 何か居るのか。見えるか、カナ。」
「クゥゥ。」 ミエマセン。
見えないんだけど、何か居る。ような気が、スルようなシナイような。早稲に逃げ込んで、死んだ人の隠かな? 違うな。
実さまがね、教えてくださったんだ。大貝山の統べる地は、耶万で執り行われた大祓で、すっかり清められたって。
・・・・・・何だろう。
早稲には、早稲神が御坐す。だから人とか獣とか、魚とかダケだよ。行き来できるの。実さまは使わしめ、嘘なんか言わない。
「夜は冷える、ソレ被って寝ろ。風除けから出るな。」
「ア、アアッ。」
「ワン!」 コラ!
「ヒッ。あっ、ココから出して。お願いだよ。」
「出すワケねぇだろ。冷めるぞ、食え。」
黙って見つめ、ガツガツ食らう。椀を匙でコンコン叩いて、ゴクンと飲み込んだ。
「お代わり。次は肉、もっと入れて。」