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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
747/1586

8-231 笑ってよ


岸多きしたやしろの司は見た。しづめ西国にしくに真中まなか七国ななくにから押し寄せたつわものに、良那らなのヨシがそそのかされるのを。


それダケなら良い。有ろう事か良那に引き込み、滅ぼす。



村も国も、守りが強く固い。けれど蛇谷と同じように、内から仕掛けられれば? 一溜ひとたまりも無い。内から外から攻めても落ちないのは、早稲わさくらいだろう。




永良部えらぶから聞かされたアコは、ブワッと闇を深めた。母の国、蛇谷が滅んだのと同じ遣り口で、良くしてくれた良那が滅ぶ? 許さない。



認めたくない。でもオレは耶万やまの、死んだ大王おおきみせがれ


母さんの国、蛇谷は滅ぼされ朽ち果てた。戻れないんだ。だから良那をと考えていたのに、困るんだよ。だから潰す。子だから何だ、甘えるな。



今は良那から岸多までしか、闇を飛ばせない。もっと強めて、早稲まで届くようにしなければ。耶万やまから大貝山までが、それくらいだから。



一山いちのやま隠神おにがみおっしゃった。『人のときの事は、人の世で』と。


戻ったらオレは社の司、人のおさだ。腐った耶万を叩き直す。てるの姿が見えたんだ、もう怖くない。鳶神の御許しも得られたし、闇の力で変えてやる。



耶万の生き残りは、オレを受け入れないだろう。けど負けない。負けてたまるか!






「アコ、アコ。シッカリするんだ、アコ。」


「あれ?」


「戻ったか。」


「照。オレ、闇に溺れてたのかな。」


「いいや、泳いていた。怖いくらいスイスイと。」



知らなかった。軽くなら良いけど、もぐり過ぎると妖怪になるのか。おにの世で暮らすのも。いや、良くない。オレが戻らなきゃ、誰が腐った耶万を導くんだ。


春になれば間違いなく、西から兵が送られてくる。鎮の西国、中の西国、真中の七国。なぜか耶万に繰り返し、仕掛けてくるんだよな。


諦めろよ、わずらわしい。




「アコ。少しくらい子らしく、雪遊びでも。」


「雪に良い思い出、無いんだ。」



耶万の継ぐ子は皆、攫われた祝の子。祝女はふりめ祝人はふりとが、耶万の誰か。まぁ初めは大王おおきみだから、兄弟姉妹が多いんだよね。


親が誰でも、祝の力が無ければ生きられない。オレが生き残ったのは、照が守ってくれたから。


知らなかったよ、ありがとう。




「社に預けられた子、冬に死ぬ事が多いんだ。だから雪を見ると、心がズゥンと重くなる。」



墓を作ろうにも、積もった雪を退かさなきゃ。重いんだ。セッセと退かして退かして、それから凍った土を掘る。


子の力は弱い、三日は掛かる。朝になったら、新しく積もった雪を退かして、それからさ。



むくろは雪に埋めて、腐るのを遅らせる。やっと掘った穴に、カチンコチンに凍った骸を埋める。『遅くなって、ごめんね』ってあやまりながら。



「あんなの、もうウンザリだ。」


「そうだね。」



恐れられても怖がられても、恨まれたって構わない。この力で、母さんから貰った闇の力で、子を泣かせない国に変えるんだ。


使えるモンは何でも使う。オレは大王の倅、歯向かうヤツは闇に沈める。思い知らせてヤル。クックック。



「アコ。顔がしいよ。」


「いけないイケナイ戻さなきゃ。どう、戻った?」


「うん。笑ってよ、アコ。ひかるみたいに。」


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