表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
746/1587

8-230 あぁコワ


ハァ。オレまだ子なのに、早稲わさのために死ぬのか。戦場いくさばなんか行きたくない。


母さんも父さんも嫌いだ。何だよ、捨てるコトないだろう。そんなにオレが嫌いか。ちょっと悪さしたダケ、殺してない。なのにさ。



「オイ、聞いてるのかヨシ。」


ヨシの肩を掴んで、ワカが問う。


「・・・・・・ん? オレ子です。許してください。」



コイツ、心が腐ってる。良那らなでは子だと、何をしても許されるのか? コレは叩いても鍛えても、難しいだろうよ。ギリギリまで壊して、追い詰めるしか無い。


腐ったのを捨てて、癒えるのを待つ。そのままなら死ぬ、治ったら叩き直す。それダケさ。




「弟に謝ったのか。」


低い声を出し、カツが問う。


「エッ、何で? オレ悪くない。」


・・・・・・。



親の言い付けを破って、雪に覆われた川へ向かったんだよな。他の子に断られて、さとされても聞き流した。


一人じゃ行っても信じてもらえない。だからあかしにと、嫌がる弟を連れ出した。そうだよな。



何も持たず、怯える弟をそりに乗せて進んだ。れて、集山あつやまに突っ込んだ。


凍えて動けなくなった弟を抱きしめたのは、ただ寒かったから。助けようと思ったのでは無い。



少しは悪いと思ったか? 国守に見つけられた時、なぜ『悪くない』と言った。凍え死にそうな弟は繰り返し、震えながら助けを求めたと聞く。なのにナゼ。




オレにも弟が居た。小さくてな、守りたいと思ったよ。死んじまったけどな。良い兄で有ろう、しっかり生きよう。そう思わせてくれためぐし子さ。



オレはオカシイ歪んでいる。それでも親になれたのは、弟が居たから。弟がオレの心を、しっかり支えてくれている。


だから弟を傷つけたり殺そうとするヤツは、どんなに小さくても許せないんだ。




「あのオレ子だから、許してくれますよね。戦場なんかに、ほうり込みませんよね。」


「子でも生まれがドコでも、男なら戦え。早稲が仕掛けられれば、真っ先に放り込む。逃がさん。」


すがるヨシをにらみつけ、カツが言い切った。


「そんな! 嫌だ。ワカさん、良那に帰りたい。連れて帰ってよ。」


「断る。ではヨシの事、よろしくお願いします。」


良那の臣ワカ、早稲の長に頭を下げる。


「はい、お預かりします。ではシギ、頼みます。」


「はい。ワカさま、こちらへ。」


早稲の社の司シギ、ニッコリ。



エッ、嘘だろう? オレ早稲に売られたのか。オイオイ、何だよ何でだよ。


見送りにも来なかった親、子を助けようとしない国守、たみを売るおみ。良那って、良い国じゃなかったのか。



クソッ、クソくそクソッ。オレは死なない、生きてやる。生き残って、ギッタンギッタンにしてヤル!






「カツ。コイツ、放り込むか。」


冷たい目をして、早稲のおさヒト。


「それが良い。コイツ、腐ってる。」


見下しながら、早稲の大臣おおおみヌエ。


「頭、冷やしな。」


嘲笑うように、早稲の臣セイ。



こうして見ると、三人とも似てるな。あの長に。オレも歪んでるけど、負けるわ。あぁコワ。



「偉い人たちのおおせだ。しばらく入ってろ、来い。」


早稲の狩頭だもん。カツだって、偉い人だよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ