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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
745/1584

8-229 そんなぁ


早稲わさから仕掛ける事は無い。いくさでも何でも仕掛けられれば迷わず攻める、国より豊かで強い、戦好きな村。それが早稲。



『早稲の他所よその』人が戦から戻らず、残された子を連れて若いのが去った。その隙をつき、玉置と三鶴が攻め込む。


ボロボロになった早稲を救ったのが、カツとセイ。






「おや? 迎えかな。」


大貝山の統べる地のはしで、男が手を振っている。


やしろの司からは、何も聞いていませんが。」


うん、オレも聞いてない。



舟を寄せ、かいをワカに持たせる。舟を降り、ギリギリまで近づいた。



良那らなの国守、オトだ。」


「早稲の狩頭、カツだ。悪たれを迎えに来た。」


「ワン。」 ムカエニキタ。



『春まで待てないホドの悪たれ』でしょう? 社の司から聞いたけど、酷いね。カツさんは早稲の柱だ、オレが守る。アヤシイ動きをしたら、迷わず噛むからな!



「良い犬ですね。名を聞いても?」


「カナだ。」


「ワン。」 ヨロシク。



クンクン、人じゃナイ。カツさんにもオレにも見えるってコトは、姿を見せてるんだ。妖怪の国守に違い無い。



前に早稲神わさのかみの使わしめ、さねさまに会った。チラッとネ。


妖怪ってね、祝の力を持たない生き物には、少しも姿を見せないんだ。オレは狩頭の飼い犬だから、一度ひとたびだけ会えたんだぞ。エッヘン。




「櫂を持ってるのはおみ、親かな。」


「良那の臣です、名をワカ。」


「二人はココで預かる。オトは、どうするんだい。」


「良那に戻ります。」


「そうか。舟はドウどうする。」


「ワカが。臣ですが鍛えていて、力も強い。早稲からココまで、スイスイ漕げるでしょう。」


「解った。」



オトは舟まで戻り、ワカに伝える。ヨシは分かりやすく怯え、舟底に突っ伏した。



「ココまで迎えに来るから、ワカ。帰りは社を通して、知らせてくれ。」


「そうするよ、ありがとう。」






「舟寄せが見えた。ソロソロだ、起き上がれ。」


縛られたまま、恨めしそうな目で見つめるヨシに、ワカが声を掛けた。


「ンググ。」 コレトッテ。


アコをクイッと上げ、訴える。



ワカがもやくいに縄を掛け、ヨシを舟から降ろした。それから布を解く。ヨシの横で、黙って見守るカナ。噛む気マンマン。


どんな悪たれも、良い子になっちゃう。



「縄は、早稲の人に解いてもらえ。」


「・・・・・・助けてよ。オレ、死にたくない。」


「曲がった心が真っ直ぐになるまで、鍛えてもらえ。」


「そんなぁ。オレ、子だぜ。」


「だから何だ。サッサと歩け、進め。」


「ウゥゥ。」 カマレタイノカ。


「ヒッ。」


ヨシ、半べそをかく。


「来い!」


ションボリと項垂うなだれ、トボトボ。


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