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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
742/1586

8-226 危険因子


「悪い子だ。」


溜息まじりに、良那らなの国守オト。


「や、じろ、の・・・・・・。」


ガタガタ震えて、ヨシは上手うまく話せない。


「ご・・・・・・あぁ・・・・・・い。」


鼻水を凍らせ、トシが謝る。




集水川あつみがわへ行こう』と言い出したのは兄、ヨシ。『親の言い付けは、破るために有るんだ』と胸を張り。


他の子はイケナイと止めた。けれど、聞き流したのだ。



弟トシを巻き込んだのは、川まで行ったあかしを得るため。嫌がる弟を引っぱたき、そりに乗せたのは他の子に断られたから。



遭難して、やっと気付く。言い付けを破れば死ぬ事になると。


良那から遠く離れた、それも山の中。北も南も東も西も判らない。熊や野良犬のらいぬに見つかれば、きっと食い殺される。



「だぁ・・・・・・ぇて。」


体の芯まで冷えている。このままでは凍え死ぬだろう。


「わ、るぐ、ない。」


歯をカタカタ鳴らしながら、弟の小さな体を抱きしめている。



狐の毛皮をトシに巻き、抱き上げる。ヨシは動けるようなので、犬が引く橇に乗せた。兄弟の橇は壊れて、使い物にならない。



「行くか。」


「ワン。」 ハイ。




愚かだな。言い付けを破るから、こんなコトになるんだ。ずっと前、やしろで聞いたぞ。言い付けを破って隠れ家を出て、敵を引き連れて戻った娘の話。



腰麻こしまだよ。愚かな王が、耶万やまいくさを仕掛けて負けた。


正妃むかいめが頭を使って守ったんだ。若い人と子を、隠れ家に隠して。なのに娘は飛び出した。で、逃げ帰って来た。敵を引き連れて。



とっても賢い姫とひこが、みんなを守るために死んだ。なのに売ったんだ。姫と彦が、命を引き換えに守った人たちを。



捨てようよ。生かせば良那にわざわいもたらすんじゃないの? 狩り犬のカンだよ。


犬だからさ、橇を引けって言われれば引く。獣を追い込めって言われれば追い込む。けどイイの? 生きたまま連れ帰って。




「帰ったら、分かるな。」


「・・・・・・あぃ。」



みんなに叱られる。ひとやに入れられて食べ物、もらえない。ごめんなさい。言い付け破って、ごめんなさい。死にたくない、生きたいよ。



よく考えればオレ、悪いな。いっつも言い付け破って、好きに暴れて、イロイロ壊して見下して。


止められないんだ。頭の隅っこではイケナイって、ちゃんと分かってる。なのに止められない。



オレきっと、オカシイんだ。頭、壊れてんだよ。どうしよう怖い。聞こえるんだ、ヤレって。暴れろって。社の司が言ってた、腰麻のアキと同じかも。




「アコが居なければ、こんなに早く見つからなかった。」


「アコで、やぁまぁ、の。」


「そうだ。決して忘れるな、シッカリ覚えとけ。祝には出来る事と、出来ない事がある。」



良那で闇の力を持つのは、今のところオレ一妖。スオさまは妖狐だ、とても強い使わしめ。人をドウコウするとは思えない。


オレは国守、死ぬまで尽くす。けど中から壊されたら? 闇の力でも守れない。蛇谷のように。だからコイツは、ヨシは危ない。このままじゃ禍を齎す。


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