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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-1 どす黒いモヤ

新章、スタート!

 

「ツウと生きる」「コウと生きる」将来を誓い、見つめ合う二人。釜戸山から、乱雲山へ。

 争いのない、平和な村を作って、ずっと、ずっと幸せに暮らそう。


 二人は知らなかった。乱雲山に、問題児がいることを。不穏な動きがあることを。

 悪しき妖怪による、ロクでもない企み。山裾の地で勃発する、戦。良くないことが、次々と。


 神、使わしめ。祝、神に仕える妖怪たち。苦悶しながらも、突き進む。守るべきものを、守るため!


 乱雲山編、はじまります。

霧雲山きりくもやまが統べる、最果ての地。遥か昔、地が震え、深く抉れた。そこに水が溜まり、湖になった。


魂迎湖たまむかえのみずうみの近くに、村はない。国もない。しかし、多くの人が訪れる。



魂迎湖は、根の国に繋がっている。そう、信じられている。湖の主は、美しい大鮒。男神は白い大蛇で、その姿を見た者は、大いなる力を得る。


神は、美しい妻を片時も離さない。湖上で寄り添い、御守りくださると。




嘘である。大嘘である。湖は、根の国どころか、どこにも繋がっていない。主? そんなもの、どこにも!


神は、魂鏡神たまかがみのかみ。とても穏やかな、水の神。男神ではなく、女神であらせられる。


白い大蛇は、魂鏡神の使わしめ、ハク。揃って、涙脆い。



あまりに違いすぎて、気の毒にお思いさった鑪神たたらのかみ。使わしめヤイバと共に、そっと、鑪山たたらやまから見守られることに。


鑪山と魂迎湖は、そんなに離れておらず、近いとも言える。ご近所づきあい、コレ大事!


水の神と火の神。蛇とやまいぬ。それはそれは、仲睦まじい。





魂迎湖から、少し離れたところ。畏れ山の統べる地に、何の前触れもなく、攻め入った風見かぜみの国。


三つある村、それぞれに兵を送る。若い男を捕らえ、残りの男、女。歳に関わらず、皆殺し。嬰児みどりごまで、容赦なく。



「もっと、もっと!」


どす黒いモヤが叫ぶ。



穏やかな人が暮らす地に、血の雨が降った。多勢に無勢。一溜りもない。助けを呼ぶことすら叶わず、滅ぼされた。




「フフフフ、フフフフフフフフフ。」


三つの村から奪った魂を、思う存分、吸い込んだ。


「やっと落ち着いたわ。でも、まだ足りない。」


霧雲山から張られた何かが、弾き出す。その度、多くの魂が抜けた。


山裾の地には、多くの人が暮らす。奪いたい放題。そのためなら、惜しくない。


「さぁ、はじめましょうか。」


魂を抜かれる痛みに耐えながら、魂迎湖めがけて、突き進む。




モヤが離れたことにも気づかず、勢いづいた兵は、魂鏡社たまかがみのやしろへ。


元々、男しかいない。にも拘わず、祝女はふりめを出せと、大騒ぎ。ハクが湖から頭を出した、その時。 祝が叫んだ。



「お戻り下さい! 愚かにも、力を得るため。社を襲えば、力を得られる。そう、考えるでしょう!」



人の欲には、限りがない。ハクは泣きながら、水底へ。山狩りが行われ、火まで放たれた。




激怒なされた鑪神、一瞬で消火。ヤイバは仰せに従い、牙を剥く。辺りの妖怪、総動員。不届き者ども、蹴散らした。


・・・・・・祝辺の守の、許しなく。




良くて、墓場送り。妖怪たちは覚悟を決めて、いとま乞い。あちらこちらで、涙、涙。雁首揃えて、霧雲山へ。


裁きの場に現れ出られた、山守神やまもりのかみ。祝辺の守を招喚。そう、丸投げ。


『事が事ゆえ、咎め無し』と相成あいなった。


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