8-223 信じられない事ばかり
勝手に建国された妖怪の国は、ビックリするほどアッサリ滅亡。瓢の王は民を守るため、提示された条件を全て呑んだ。
不平等条約だが、『異なる国の民』として在留できる。そう悪い話では無い。
話が通じない妖怪対策もバッチリ。悪い妖怪や合いの子は、瓢の民がサクッと片付けてくれる。
「稻羽、ありがとう。」
隠の世や中の東国に頼る前に、何とかなったヨ。
「お役に立てて、嬉しく思います。」
照れ照れ。
「瓢の娘を、なんてね。」
ジトォォ。
「何のオハナシかしら。」
須勢理毘売、ニッコリ。大国主神、真っ青。
「私は、これにて。」
使わしめ稻羽、巻き込まれる前にピョン。
西に鎮の西国、北に中の西国がある四つ国。北に真中の七国がある南国、西に真中の七国がある中の東国。その何れも、海と接している。
「大貝神。おっ、大事です。」
「空から魚でも?」
「降って来たのは亀です。」
・・・・・・エッ。
海神の使わしめ、甲。海亀の妖怪で齢 、千年以上。人の姿にも化けられる。使わしめは皆、海の生き物。陸に上がれる者は数えるほど。
甲が大貝社へ行く事になったのだが、人に化けるのは疲れる。なら思い切って『川から行こう』と考えた。
今は冬、雪が高く積もっている。固まっていればスイッと滑って、きっと楽しい。
スイスイ進んで水から上がり、雪の上に出る。クルクル回りながら四肢でペタペタ。固まっているのを確かめ、キャッホォイ! 亀が空を飛んだ。で、ズボッ。
雪遊びをタップリ楽しんでから、人の姿になって出た。なんてコト、土は知らない。蜘蛛の足は細い。亀を引き上げようにも、踏ん張れなければ・・・・・・。
「ごめんください。」
ウミガメ救出作戦が練られているとは知らず、声を掛けニコニコ。
「はい。こ、甲さま?」
「お久しぶりです。土さま。」
「土。耶万から溢れた闇と、鎮の西国で溢れた闇。闇は闇でも、違うようだね。」
「はい。人から生まれた妖怪は、驚くほど速く育ちます。けれど妖怪を束ね、国を建てるとは。」
甲から伝えられたのは『西国で起きたアレコレ』について。その全てが、信じられない事ばかり。
妖怪の国、瓢は滅びて無くなった。大札に手の形を押したのだ。悪い事は出来ないし、大社の求めに応じ続ける。
逆らうことも拒むことも出来ないのに、なぜ押したのだろう。考えるまでも無い。やる気を出したか、兎の怒りに触れたか。
「閉ざされている間に、片付けば良いのですが。」
「腰麻の事もある。闇の動きを探るため、社を通して呼びかけよう。」
「はい。」
人から生まれた妖怪と闇の力について。大貝山の統べる地で、詳しく調べる事になった。禍を齎すなら、直ぐに清めて滅ぼす。
人の世を守らなければ。