8-219 いざ、参る
大祓で清められても生き残った、新しい妖怪を探す。祝の力を生まれ持ち、妖怪になった者。失った力の代わりに、闇を得た妖怪。
大貝山の統べる地で生まれたのだ。鎮の西国、中の西国、真中の七国を合わせれば百。いや、千は生まれたハズだ。
「申し上げます。中の西国、全て調べました。」
ワクワク。
「妖怪となり、闇の力を宿した元、人は。」
ドキドキ。
「一妖も見つかりませんでした。」
・・・・・・エッ。
「申し上げます。鎮の西国に出来た妖怪の国より、使いが参りました。」
使い兎、モフッ。
「何と。」
会いたい? 会わないよ。
「御目通りを、と。」
イヤです。
お預けを食らっても雪遊びが諦められない稻羽は、ふと考えた。大祓で悪しき妖怪は消えたハズ。新たな妖怪が生まれないホドの大祓、生き抜いたとすればソレは。
いや無い。妖怪の国が出来てから大社に来るまで、幾ら何でも早すぎる。耐えたのではない、逃れたのだ。
国を建てたのは昨日、今日では無い。ずっと前。狙いは何だ、誰が来た王か。それは無い。だとすれば臣、大臣。
「大国主神。宜しいでしょうか。」
「許す。」
スックと立ち上がり、前足を重ねた。赤目を光らせ前歯をキラリ。うさチャンの本気、見せてヤル。
行動は敏捷・活発、繁殖力は頗る大。肉は食用、毛は筆に。無駄がナイのが自慢デスって、それは良い。
「その使いは、王の何だ。」
思い人なら勝てる。こちらには、強い御方が。
「大臣だと。」
ホウホウ、そうですか。
「では私が。」
使わしめ筆頭、稻羽。キリッ。
毛皮を剥がされ、岩の上で泣いていた兎が輝いている。強くなったね、稻羽。私は嬉しい。良い使わしめを持った。ウルウル。後は任せるヨ。
「いざ、参る。」
ピョン!
「大社、使わしめ稻羽。」
「瓢の大臣、鯰。王の名代として、参りました。」
滑だけでは無い。瓢の上層部には、大陸妖怪の血が流れている。弱小ゆえ海を渡り、ひっそりと暮らしていた。それを食らったのが、人と妖怪の合いの子たち。
生き残ったのは運。多くはバケモノと同化した、アンナとマリィがペロリ。響灘を越え、中の西国へ渡ったので助かった。
恐ろしくなり一度、やまとを離れた。頃合いを見て戻り、驚く。濃い闇がアチコチから噴き出していたから。
それら全てを取り込めば、国だって。
「それで瓢は人を、どのように。」
「攫ったり虐げたり、食らう気は御座いません。」
「瓢に、人を住まわせると。」
「いえいえ。そのような事、有り得ません。」
スッと、鯰の目から光が消える。