8-218 果てまで行けば
・・・・・・困った。どうする、どうしよう。
大祓の儀は、なんとか成し遂げた。悪しいモノは清められ、消えて無くなった。なのに、人から妖怪が?
「大国主神。鎮の西国で、妖怪の国が出来ました。」
「なっ、ナント。」
滅んだ里や村、国も同じ。生き物が居ないダケで家は有る。田も畑も、そのまま残っている。居抜き物件、しかもタダ。そりゃ住み着くよね。
「王は滑と名乗る、掴まえ所の無いバケモノです。」
「ばっ。」
バケモノって、アレか。海を越えて来た、アレなのか。
「闇を纏うも、形を持たぬようで。」
ようで?
・・・・・・早う言わぬか。気になる、何なのだ。ヨもや化け王ノ使いデハあるマい。ウウン。声が裏返ったガ、気ニ病むナ。
「稻羽。焦らすでナイ、申せ。」
「人から生まれた妖怪。としか、今は。」
なにソレこわい。
「中の西国、では。」
ゴクリ。
「今は、まだ。」
今は、というコトは生まれる。生まれるのか! 急ぎ隠の世へ。イカン、閉ざされたままだ。いつ開く。・・・・・・開く、のか。
「稻羽、急ぎ因幡へ。」
「隠の世は閉ざされたまま、妖怪の墓場も同じ。」
『八上比売へ思いを』と仰るのなら喜んで。違うのなら私、雪の上をゴロゴロ、ピョンピョンして参ります。
「稻羽よ。」
「はい。」
「木俣神は、どのように。」
「穏やかに御過ごしです。」
「そうか。」
「はい。」
・・・・・・お願い、察して。水筋を辿れば、畏れ山の使い隠と話せる。のであろう? 霧雲山の統べる地は、中の東国に在る。果てまで行けば。
「大国主神。畏れながら申し上げます。」
「ウム。」
「人の世の事は、人の世で。」
「お、隠の世は頼れぬと。」
そうです、その通りです。そうなんです。御隠れ遊ばした神の多くが、耶万神にイジワルを。それダケではナイ。
大蛇神と牙滝神にソッポ向かれ、なかなか上手くイカナイ。
開いているのは三つ。他は全て閉ざされ、行き来できない。恐ろしい妖怪が生まれているのに、御頼み出来ない。打つ手が無いのだ。
このままではイケナイ。何とかシナケレバならない。なのに、どうすれば良いのか分からない。ないナイ無いナイ、無いんだよぉぉ。
「中の東国でも生まれたが、片付いたと噂で。」
「真か。」
「飛国からの使いが、そのように。」
見えた! 収まるぞ。急ぎ使いを。