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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
733/1588

8-217 蛇谷の血


腰麻こしま四姫よつひめ、アキは消滅した。


体はアンナとマリィに食われ、魂は紅蓮ぐれんの炎に包まれて。闇に飲まれたのか、それとも操ったのか。今となっては確かめようが無い。


けれど娘に植えつけた闇は三つ全て、加津の祝に清められる。もう、何も残っていない。



朝なのに加津まで行き、見届けたユラは思う。『何が悪かったのだろう』と。


ヒシヒシと伝わる痛み、苦しみ。気の毒? そうは思わない。おのがした悪い行いの報いを、己が受けたダケのコト。



四姫は甘やかされて育った。叱られる事も耐え忍ぶ事もなく、ただタダ甘やかされて大きくなった。何でもアキの思い通り。己を軸に、全てを考える。


そんな娘が、認められるだろうか。



家の中ではチヤホヤ、外では・・・・・・。


そりゃ生きにくいだろう、つらいだろう。子を育てしつけるのは親のつとめ。それを投げ捨て、マコは己だけを愛した。つまり子が、子を産んだのだ。




「ユラさま。」


「ロロさま。私はユキに、何を。」


「どんな時も見捨てず、そばにいる。わたくしなら、そのように。」


「そう、ですね。」



たとえ人のときおにの世に認められなくても、私だけは認めよう。受け入れよう。ユキは一人では無い、私が居る。それで良い、それが良い。



妖怪の祝は珍しい。きっと心の強さや、力のほどが厳しく試される。そんな苦しみが待っている。それらを乗り越え、生きなければイケナイ。


ユキ。この命ある限り、ともに生きよう。決して一妖にしない、誓う。だからネ、笑っておくれ。






大貝神おおかいのかみ?」


使わしめ土、キュルルン。


「・・・・・・耶万やまのアコも、闇を。」


「はい。生き物に植えつけ、闇を吸わせて実を付けさせると。」


「アコも、腰麻のように。」


浅木社あさぎのやしろからの知らせによると、それは無いと。」



良那社らなのやしろでシッカリ学びながら、闇の力と向き合っている。


アコは祝の子。蛇谷の祝は闇の力で、守りたい全てを守る。耶万が仕掛けて来た時も、そうして力をふるった。


祝が奪われなければ、蛇谷が滅ぶ事は無かっただろう。敵が入り込んでいるナンテ誰も、夢にも思わなかった。裏切り、いや違う。偽っていたのだ、はじめから。



蛇谷は小さいが豊かな国。だから多くの村や国に狙われ、仕掛けられた。国守が攻め、祝が守る。それが蛇谷の戦い方。つまり、祝を奪われれば滅ぶ。


蛇谷の子を質に取り、祝を捕らえた。『誰も殺さない』と誓ったのに毒を撒いて、蛇谷の皆をなぶり殺した。耶万の大王に祝を差し出したのも、水手かこだったスイ。



蛇谷の血を引くのはアコ、たった一人。


誰が父なのか、生まれるまで分からなかった。耶万王が父だと判り、継ぐ子としてやしろに預けられる。殺される事は無かったが、母なき子。


当たり前のように、酷い扱いを受け続けた。



祝は蛇谷で起きた全てを闇に移し、我が子の魂に刻む。余すところ無く、伝えるために。


祝の力が有ると気付かれれば、きっと使い捨てられる。だから闇に飲まれる事なく使いこなせるうつわが出来るまで、その力と共に隠された。



「蛇谷の者は皆、魂が強い。闇に飲まれる事なく皆を導くでしょう。アコを信じましょう。」



ずっと昔、蛇谷神へびたにのかみの使わしめ、ウロさまからうかがいました。蛇谷の祝は皆、闇から光を引き出すと。


アコは母から、光を託され生まれた子。耶万より蛇谷が強い。ですから、きっと。



「ウム。そうだな、信じよう。」


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