8-216 私だけを愛して
ナニどうなってるの。ココから出してよ、出しなさい。何も聞こえない分からない。真っ暗で狭くて苦しくて、いや嫌イヤ!
こんなハズじゃ無かった。人と同じように生まれて、美味しい物をいっぱい食べてスクスク育って。それで、それで・・・・・・。なのに、なのにぃぃ!
出せ出せ出せぇ。ココから今すぐ、出しやがれぇぇ。
「わぁぁ、まだ暴れてるよ。」
「クベさん、痛くない?」
「痛くないよ。ありがとう、イイ。」
優しく撫でられ、ニッコリ。
触りたくないなぁ。そうだ、甕ごと清めよう。一つづつ清めるより、きっと良い。そうだ、そうだ、そうしよう。
はい、ゴメンサナイ。一つづつ清めます。お願いツサさま、そんな目で見ないで。私が悪う御座いました。だから、ね。
「では、始めます。」
加津の祝サハ。いっき、まぁす。テイッ。
「ギャァァァァァァァァァ。」
熱い。熱い熱い、熱い!
なにコレ痛い、ヒリヒリする。苦しい助けて、お願い。誰か助けて、助けてよ。
ナンデこんな思い、しなきゃイケナイの。アタシは四姫、皆に望まれて国守になったアキよ。誇り高き万十の血を引く、腰麻の美しい姫。なのに、なのにナゼ。
母親が側女だから? そんなのオカシイ。
正妃も同じ万十の生まれ。アッチは万十の大王の従姉で、コッチは臣の娘だけどさ。ソレが何だってのよ!
「ギャァァァァァァァァァ。」
熱い。熱い熱い、熱いぃぃ。
なんだコリャ、ヒリヒリする。痛い苦しい、息が出来ない。誰か助けろ、今すぐ助けろ。
ナンデこんな思い、しなきゃイケナイのよ。アタシは腰麻の四姫。望まれて国守になったのに、ナニこの扱い。殺されたいの、死にたいの。何とか言いなさいヨ!
信じられない。万十から捨てられたからって、見捨てる事ナイじゃない。助けてよ。認めてよ、受け入れてよぉぉぉぉぉ。
「ギャァァァァァァァァァ。」
熱い。熱い熱い、熱い!
なにコレ、痛いんだけど。ヒリヒリするんだけどぉぉ。息が出来ない苦しい痛い。喉が焼ける、アチコチ痛い。誰でも良いから、助けてよ!
ナンデこんな思い、しなきゃイケナイの。アタシは腰麻の四姫、アキよ。死んで妖怪になって、望まれて国守になったのに、なんで。
褒めてよ認めてよ、受け入れてよ。優しく撫でて、ギュッと抱きしめてよぉぉ。
「アタシヲ、ミテ。」
「アタシダケヲ、ミテ。」
「ツヨク、ダキシメテ。」
兄さんは凄いよ、それは認める。でもユイは大した事ない。ユズだって同じ、大した事ない。なのにナゼ比べるの。
ユイなんて嫌い、大っ嫌い。ユズも嫌い。だから死んだ時、すごく嬉しかった。嬉しかったのに!
おかしいオカシイおかしい。そんな目で見ないで、悪く言わないで。オカシイおかしいオカシイ。
お腹空いた。もっともっと、ちょうだい。足りないタリナイ足りない、全て寄越せ! 食わせろ。食わせろぉぉ。
お願い。誰か、私だけを愛して・・・・・・。




