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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
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4-27 遅すぎる後悔

切り取ってから、獣谷へ。獣谷の仕置場では、茅野のタツと同じ、痛みと苦しみが与えられる。早稲の罪人たちは、後悔した。あんなこと、しなければよかったと。


あちこちが痛む。舟がゆれるたび、激痛が走る。気を失えば、水を掛けられる。そして、再び。




「着いたぞ。」


狩り人に引き立てられ、仕置場へ。歩くことも、できない。ズルズル引きずられる。


あぁ、オレは、同じことを、した。あの時、こんなだったのか。許されるなら、いや、もう遅い。何もかもが遅すぎた。でも、終わる。楽になれる。そう、思った。




一人づつ、離してほうり置かれた。獣の声が聞こえる。ゾッツ、ゾッツ、ドサッツ。


「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。」





暴れ川は、流れが早い。底なしの湖は、上流。数人で舟を漕ぐ。ノロノロ、ノロノロ。獣谷の仕置場が見えなくなった。そして、響いた。


誰も、何も言わなかった。ただ、泣いていた。この手で、かたきを討った。なのに、なぜ。


帰ってこない。わかっている。何度も、何度も考えた。あの時、ああしておけば。こうしておけば。悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。


底なしの湖から、深川。大川へ進み、釜戸山。釣り人の村で休んだ。泥のように眠った。




釜戸社へ。残された品は、清められていた。そっと胸に。


「おかえり。」


誰かが言った。




早稲の村長、その倅ジン、早稲のタツ。三人の骸は、捨て置かれた。数日ののち、獣谷の仕置場は、清められる。


社の司シロ、禰宜ロク、祝人ササ。守り長カイ。狩り長ゴンと、二人の狩り人。七人は、一言も話さなかった。




遺骨は、早稲の村へ届けられた。守り長によって。


早稲の村は、荒らされていた。誰もいなかった。村人たちは、村外れに。


残された空き家へ、移り住んでいた。


「シゲたちは、どこに。」


「さあ、わかりません。引っ越しました。釜戸社から帰って、すぐ。」


間に合ったのだ。三鶴と玉置が攻めてくる前に、早稲を出た。


きっと、新しい村をつくっている。良村を。




「長の子らは、残らず。シンも、受け取らないでしょう。あの人は、早稲の、あの長の子じゃない。」


「では、あなたが。」


「はい。」


早稲の社の司が、黙って受け取った。





釜戸山は、モクモク煙を吐いている。いつもと同じ。


エイは、祈った。魂が、迷うことなく。愛しい人の元へ、帰れますようにと。


釜戸社編でした。


乱雲山編へ続きます。お楽しみに。

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