8-213 可能性はゼロじゃない
「フアァァ。」 ヤットデタァ。
人と同じように生まれるって、疲れるなぁ。狭いし苦しいし、何なのアレ。信じらんない。ふぁぁ、眠い。
壱が言ってた、闇の女はドコ? ユキはユキでも、コレは違うし。そのうち来るか。起きたらゴハンだ。ムニャムニャ・・・・・・。
「ギャッ!」 エッ!
柔らかい何かの上に寝かされ、瞼を閉じた。そしたら胸を貫かれ、骨ごと真っ二つ。妖怪だって、心の臓を刺されれば死ぬ。
クソッ! ・・・・・・出られない。
エッ、何これ。ちょっと壱、弐。ナンデ教えてくれなかったのよ、イヤ嫌いやぁ。グサグサ刺したり、切り刻むのは好きだけど。好きだけどぉ。
痛いのはイヤァァァ!
「まだ動いてる。」
フタが呆れる。
「壱なんて、跳ねてるぜ。」
苦笑いしながら、ミカ。
「うわぁぁ。」
クベ、ドン引き。
「弐も暴れてる。」
モトも苦笑い。
「諦めの悪さは、アキ譲りね。」
シミジミと、ユキ。
使い終えた清めの水を、捨てようかと思ったが止めた。
闇で濁ったとか、染まったワケでは無い。清らなまま。だから闇で包んだまま放り込み、蓋をした。
腰麻と加津は離れている。
とんでもない何かが起きても、甕の中なら包みを破って出てきても、壱弐参は生きられない。シュワシュワ融けて、清められるダケ。
「みなさま、ありがとうございました。お疲れでしょう。一夜ここで、お休みください。」
そう言って、ユキが出て行った。
「腰麻の他にも、居るのかな。」
クベがポツリ。
「大貝山の統べる地には、居ないと思う。」
はい。しっかり調べましたので、確かです。
「ミカさん、オレ怖い。」
「ん?」
「ユキさんには癒しの力が有ったから、アレが移らなかった。けど、オレたち。」
四妖は考えた。社を通して頼まれれば、離れられない何かが起こらない限り断れない。
お産に立ち会うのは女だけ、男は外で待つ。産屋に入っても、端っこで後ろを向いて。が、四妖とも立ち会った。
知られたく無かったのに、広く知られた。
誰が何をしたのか、までは伝わっていない。ただ産婆を押しのけて、国守が取り上げた・・・・・・とか。
つまり、呼ばれる。間違いなく呼ばれる。その時、防ぎきれるのか。
知る限り、妖怪になった国守は少ない。その多くは、守りながら戦えない。
守りながら戦えるミカやクベは新しい妖怪。耶万の祝と組んだのに、あの大祓でも死ななかった。生き残った強い妖怪だ。
妖怪の国守は、社に守られている。だから生き残った。大貝山の統べる地に、新しい妖怪は二妖しか居ない。他は知らない。
アレを二妖で倒すのは難しい。壱弐参は、赤子だった。それでも五妖がかり。
クベが包んで、ミカが支えてくれたから何とかなった。もし戦う事しか出来ない国守なら、殺せても体を乗っ取られ、人を。




