8-210 お待たせ
壱が生まれた、次はオレ。もう待てない! こんな狭い所に居られるかよ。早く出たい、出たいよぉ。
「アッ。」
陣痛が始まった。
「ウソだろ。」
「ミカさん、まさか。」
「始まった。クベ、動けるか?」
「なんとか。」
ユキとモトが見合い、頷く。ユキは産屋へ走り、モトは耶万社へ急ぐ。
腰麻の合いの子は、人から生まれるダケの妖怪。他の地でも生まれる、かもしれない。大貝神には土から。が、清めの水が要る。
耶万社から会岐社へ話を。頼めるのはフタだけ。加津に寄って、汲んで来て貰わないと。
アレを消すには、蜂の巣にするしか無い。一つしか伸ばせないオレと違って、ミカは繰り出せる。クベもミカも新しい妖怪。戻るまで、何とか頼む。
「申し上げます!」
角と牙を伸ばしたモトが、耶万社に駆けこんだ。
「ヒッ。な、何が起きた。」
耶万神の使わしめマノ、ビックリするも立て直す。
腰麻で妖怪が生まれた? 合いの子では無いのか。もう二妖、生まれるだと! 人から生まれる妖怪なんて、聞いた事が無い。が、生まれたのだな。
「解った。和山社へは耶万から御伝えする。その前に、会岐だな。」
そう言って、スルスルと奥へ。
緊急事態につきマノが飛んだ。急いで加津から清めの水をタップリ、腰麻へ運ばなければイケナイから。
隠の世に御坐す神神へは、耶万神が御伝え遊ばす。
「ナッ! それは真か。」
って、真だな。・・・・・・ハァ。
「他に居ないか、いま一度。」
「そうだな。して、使わしめにも見えるのか。」
闇を目に集められれば、バッチリよ。
妖怪には難しくても、隠ならイケル。嫌呂や悪鬼のように、闇に耐性が有れば、使わしめで無くてもネ。
というコトで調べました。結果、該当者なし。良かった良かった、本当に良かった。
闇で分身を作って、ソレを人に植えつける。ナンテ危ない事を考えたのは、四姫アキだけでした。ホッ。
まだ安心できない。鎮の東国、中の東国、南国、四つ国には居なかったダケ。
自凝は微妙。でも鎮の西国、中の西国、真中の七国にはイッパイ居そう。ブルルッ。
「お待たせ。」
水甕を担いで、颯爽と現れた。
「重かったろう。ありがとう、フタ。」
少し前に戻ったモトが、ニコリ。
「どういたしまして。で、どうだい。」
フタもモトと同じで、守りながら戦えない。しかし闇を弾丸に変え、機関銃のように連射できる。命ある限り、弾が尽きる事は無い。
この度は交代要員として、作戦に参加する。