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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
725/1586

8-209 守られた力


いくさに敗れ、滅ぼされた国は多い。



耶万やまは他の大国おおくにと違い、滅ぼしても残す。国ごと取り込み、耶万の一つとして扱うのだ。とはいえ、生き残りは奴婢ぬひとなる。


つまり、耶万に逆らう事は出来ない。


真っ先に奪われるのは祝、次に禰宜ねぎと社の司。祝の力を持つ者は残らず攫われ、殺された。生き残りは居ない。



社を通して聞かされた、社の司は考える。『祝と禰宜をおとりにしてでも、継ぐ子を守らなければ』と。


皆で話し合い、決めた。どの子を連れ出し、守るかを。



滅ぼされた国に居る社の司と祝は、死んだ祝と禰宜によって生かされている。そうまでして守った継ぐ子が、祝を務めるのだ。


祝は狙われる。社の司が体を張るが、留まっていては守り切れない。国守も、狩り人もきこりも釣り人も、戦える男は死んだ。殺された。


誰も・・・・・・戻らない。



困り果てた時、現れる。人では無い。死んでおにになり、闇堕ちした妖怪が戻って来た。人のときに残り、生まれ育った地を守るために。



会岐あきにも大石にも、千砂ちさにも居ない。守り切れなかったのだ。けれど加津には祝も、社の司も居る。


幼子おさなごかかえて森に入り、逃げて逃げて逃げて。奥へ進んで山から山へ。沢で渇きを癒し、木の枝で魚を一突ひとつき。キノコや木の実を採り、食べさせた。



生きて戻らなければ。


社の皆に託された、この子だけは死んでも守る。見えないものが見えても、清めの力を使えても私には戦えない。だから逃げる、隠れる。加津に戻るまで。



清めの力は弱いが、好ましい人として尊び敬われる社の司。加津神かづのかみに仕える継ぐ子の中で、最も強い清めの力を持って生まれ、助かった祝。


血の繋がりは無いが、二人は親子。






「あと二人。いや、二妖か。」


モトが呟く。



クベにより隔離された空間で、モトとミカは戦った。四姫よつひめアキの分身に、とどめを刺したのはモト。後方から、援護したのはミカ。


遠隔操作は困難を極めたが、接近戦を選択しなくて良かった。憑依されれば、災厄どころの騒ぎでは無い。アレの体液は飛び散った瞬間、自我を持つ。



「清めの泉から汲んどいで、良かったな。」


ミカがポツリ。



加津社かづのやしろの隣に湧いている、清めの泉。大きさは瓢箪ひょうたんくらい。清めの祝が居る限り、涸れる事は無いと言われている。



「次は、みんなで汲みましょう。」


しんみりと、クベ。



三妖とも直ぐに気付く。このまま闇を引き抜けば、アレが外へ出ると。だから大きなかめを持ってくるよう、ユキに頼んだ。


初めてのお産は、とにかく掛かる。長引くと解っていたので、ミカがタップリ備えていた。水が無ければ生きられないのは、人も妖怪も同じ。



甕に残らずちまけ、クベの闇ごとドボン。ひたるほど無かったので、下からソロソロと引き抜く。



腰麻こしまにも、湧いていれば良いのですが。」


申し訳なさそうに、ユキ。




腰麻にも有ります。『清め』ではなく、『光』の泉が。


はらいと清めは異なります。たとえるなら、そうですね。ヘア・リンスと、ヘア・コンディショナーかな?


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