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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
724/1586

8-208 まだ動けるのか


「ウッ、ウム。」


土は思った。『コワイこわい、怖すぎる』と。



聞けば聞くほど、恐ろしい。


四姫よつひめアキ。妖怪の国守として、腰麻こしまに仕えていた。なのにナゼ、腰麻の人に植えたのだ。いつ植えたのだ?



祝の力は一つでは無い。水、風、土、火。木や岩、川や山、森や林。光、影、闇などイロイロ。中でも闇の力は多く、生き物に種を植えつける力も。



広く知られているのは祝辺はふりべの、おにもり


ふたつ守には生き物に闇を植え付け、従わせる力が。みつ守には生き物に闇を植え付け、操り動かす力が有る。二隠とも幼いが、ひとつ守の言い付けダケは守る。



良那らなに預けられている、耶万やまのアコが生まれ持ったのは、闇を植えつけ光に変える力。使いようによっては、人を従わせる事も。




「生まれました。」


闇を伸ばしたまま、ミカが一言。


「して、娘は。」


ゴクリ。


産声うぶごえを聞きながら、息を引き取りました。」


・・・・・・分かっていたのに、心が痛い。



思い人の子を宿やどし、生きて腰麻に戻ることが出来た。ひとりでも産んで育てる。その思いが、生きる力になったのだろう。


はらの子は妖怪の子。人と妖怪の、合いの子。せっかく生まれて来たのに、生かしておけない。あの禍禍まがまがしさ。殺さなければ、わざわいもたらすだろう。



「来ます。」


ミカが囁く。




言の葉が出ない。


ドス黒い闇が牙を剥き、こちらへ近づいている。仕留めなければ、多くの命が奪われる。先読の力も、先見の力も無いが判る。アレは良くない。


布にくるまれた美しい嬰児みどりごいち。ユキは闇では無く、癒しの力で防いでいる。闇だと吸われ、動けなくなると気付いたのだろう。




「さぁ、着いた。疲れたでしょう?」



腰麻の外れに建てられた、新しい産屋うぶや。『まだ使えるから』と残したが、それダケでは無い。


『産めば死ぬ』なんて、誰にも。だから母のむくろを葬るため、嬰児を離しても疑われないココを、えて選んだ。



産屋の側に建てられたのは、アキが側女と暮らしていた家。一度ひとたびバラバラにして移した。ソコソコ大きいので、闇の力を使っても驚かれない。



「お休みなさい。」


ソッと頬を撫で、ニッコリ。


「フアァァ。」 ツカレタァ。



人と同じように生まれるのって、疲れるわぁ。あんなに狭くて苦しいなんて、思わないじゃない? お腹空なかすいたけど、すっごく眠い。起きたら食おう。


にしても、この女。闇の力が有るクセに、なんで引っ込めるのよ。吸い取れないじゃない。使えないわね!




「ギャッ!」 エッ!



柔らかい何かの上に寝かされ、まぶたを閉じた。その時、胸を。妖怪だって、心の臓を貫かれれば死ぬ。他の子に知らせようと、息を吸い・・・・・・。



あれ? どうなってるの。アタシの体、真っ二つ。


首を落とされ、頭は潰されグッチャグチャ。エッ、死んだ? 知らせなきゃって、出られない! 出して、出してよぉ。



「まだ動けるのか。加津の祝に、清めてもらおう。」


ミカが見開き、呟いた。


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