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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
716/1637

8-200 落とさないでネ


逆さでは無いが吊るされたまま、加津の港まで引き寄せられたマツ。白かった髪が更に白く、薄くなった。



「ロロさま。コレ、どこに。」


何となく近づけたく無くて、持ち上げたまま海上に。


「春、耶万やまで裁きを受けさせる。それまでは決して死なせず、吹出山ふきでやまひとやに繋ぐ。」


「・・・・・・イヌッコロ。」


「そうだ。頼めるか、ミカ。」


「私に有るのは闇を伸ばして調べたり、伸ばした闇を操る力。やまいぬの願いを叶える事など出来ません。」






吹出山は小ぶりだが、黄泉平坂よもつひらさかに繋がっている。山のふもとには、石積みの社。その横にポッカリ開いた横穴が、黄泉平坂に繋がっている。



吹出神ふきでのかみは山神、坂の守り神でも在らせられる。小さくて柔らかそうな我が儘ボディゆえ、一柱で御出掛け遊ばすと必ず、何かに食われかける。


使わしめは大烏の妖怪、羽葉うば


黒狼に食われそうになっていた何かを助けたら、何とビックリ神様でした。泣きつかれ放っておけず、付き添って守るコトに。


オットリした神サマは御考え遊ばした。側に羽葉がいれば、怖い目に遭わずに済むと。で、気が付けば。




何を隠そう、神をパックンしたのはウコである。


社憑きの黒狼としてき使われ、コホン。キリキリと立ち働くが、ウコは黒狼族のおさ。どんな時も、群れを率いて行動する。



なぜパックンしたかって? 目の前に、美味おいしそうな『お肉』が有ったから。で、羽葉に殺されかけた。話し合いの末、仕えるコトに。


裏切れば一族郎党、皆殺しの刑! ブルルッ。






「妖怪の国守には闇の力が有る。使わしめなら皆、知っている。中でも大石、加津の国守には、他とは違う力が有る。なんてコトまで。」


「知られ、ましたか。」


「知られた。」



耶万での大祓おおはらえ、その生き残りである。他と違うのは当たり前。


どのような力を持つのか、分からなくても構わない。社に認められ、国守となったのだ。悪しき妖怪では無い。



「加津社から吹出社ふきでのやしろへ、話を通す。」


「はい。その間、コレは。」



「申し上げます。もしよろしければ我らが、お預かりします。吹出山で!」


ウコが胸を張り、キュルルン。



国守なのだ、闇を薙ぎ払えないのは当たり前。元、祝なら別だけど。だから断られる、分かってた。


預かれば烏に怯えずつつかれず、ノンビリ過ごせるんだ。



良い考えでしょ。お願いだから、『うん』と言って。


我ら黒狼は目立つから、とっても生きにくいの。やっと見つけた住みやすい山。追い出されたら加津を囲んで、朝まで遠吠えするゾ。




「ロロさま。託しましょう、嫌な感じがします。」


バレた? 眠れないの、キツイもんネ。


「羽葉の事だ、連れ帰らねば突くだろう。逆恨みで遠吠えされては堪らない。託すか。」


解ってるぅ。


「ハイ、お任せください。」






港に運ぶ前に、マツを縄でキツク縛った。ウコがくわえてポンと投げ、黒狼たちが背で受ける。


エッ、そうやって運ぶの? 落とさないでネ。


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