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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
713/1585

8-197 何事もホドホドに


「何だ、なぜ。」


マツがブツブツ言いながら、熊のようにウロウロ。


「ひもじいよぉ。」


光江の子が、ポツリ。


「ア゛、何だって。」


睨みつけられ、ガタガタ。


「売りモンにならねぇクセに!」


蹴り飛ばされ、うなりながら小さくなる。


「サッサと死ね。」



マツは水門頭みとがしら。思うように集まらず、光江の生き残りを売り払った。残ったのは親無しと、死にぞこないダケ。


あれだけ攫ったのに、あれだけチョロマカしたのにナゼ残らない。横取り、横流しもバレた。全て差し押さえられ、戻らない。



「死んだってのは、まことか。」


ヤツらのコトだ、取っ捕まってもトットと逃げる。そう思っていたのに、誰も戻らない。


「浅木か。」


人を集めても、浅木に勝てるとは思えない。


耶万やまき付けて、向かわせるか。」


新しい王はスイ、気弱な男さ。チョイとつつけばコロリと寝返る。使い捨てるには、持って来いの男さ。



隠れ家が見つかり、追い詰められて火を掛ける。敵がひるんだ隙に飛び出し、ひたすら逃げた。逃げて逃げて、やっと辿り着いた光江はボロボロ。


悦のシュウ、うねのユリ、大野のカズ、安のミエ。頼みの綱は誰一人、戻らない。見込みがあるのは大野のガガだが、どこで何をしているのか。



「アァァ! 何も変わらない。」


同じコトばかり考えてるじゃナイか。シッカリしろ、オレ。



耶万は食べ物の受け取りを、光江から加津に変えた。


そうだ、加津なら海から行ける。腰麻こしまにも大石にも、バケモノが居た。加津には居ない。



居たら万十まと氛冶ふや大臣おおきみが、加津なんてチッポケな国に。耶万にアッサリ敗れた、加津の生き残りナンカに任せるモンか。だから居ない、居るワケが無い。



「風が吹いてきたゼ、オレサマによぉ。」


グフフ。






「フン、フフンッ。」


イイが楽しそうに、はたを織っている。



手織機ておりばたの扱いを婆さまからならい、気に入ったイイに強請ねだられたのだ。『お家にコレ、作って』と。


父親という生き物は、どうにも娘に弱い。可愛く『お願い』されればイチコロ。器用にパパッと、竪機たておりを作り上げた。



機を織るイイの側で、ミカが縄をう。


筵打むしろうちはしばらく、お休み。ミカが編む筵は強く、使い易い。そうそう草臥くたびれナイので、少し有れば良い。


ミカが綯った縄も強い。釣りに狩り、暮らしにも欠かせない品だ。用いドコロが広いので、多いと助かる。



「ん。」


何だ、この感じ。イヌ、いややまいぬの群れ。なぜ山を出た。吹出山ふきでやまってトコか。真っ直ぐコッチへ向かっている。


「イイ、少し出てくる。」


・・・・・・シュン。


「直ぐに戻るよ。」


優しく撫でられ、ニッコリ。


「はい、お家に居ます。行ってらっしゃい。」


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