8-196 そろそろ、戻りませんか
「キラキラがフワフワで、あたかいネ。」
「天つ神の御力ね、きっと。」
良村からも、金色の雲が見えました。とはいえ、見えるのはマルとタエだけ。祝の力が無ければ見えまセン。
他の人には、どのようにって? 大きな雪雲に見えてマス。『大雪が降るかも』と急いで、薪に覆いを掛けに行きました。
「ねぇ、マル。」
「なあに、タエ。」
先読の力で、良く分からないモノを見た。
何となく母さんに似ている女の人が、女の子を産む。その嬰児の体の中に鏡と、光る珠と剣が入っているの。
それだけでも凄いのに、神とは違う、とっても大きい力が。
でね、ついてるの。守り神とは違うけど、守るようにね。朝日のように輝く髪と、夜空のように輝く瞳を持つ、とっても美しい人の姿をした何かが。
「おんにゃの人、タエじゃナイの?」
「うん、違う。」
「しょっか。」
「クゥゥ。」 ソウナンダ。
マルと同じように、首を傾げるマルコ。
ボクね、思うんだ。タエが見たのは、ずっとずぅっと先の事だって。マルの清めの力でタエの心、とっても穏やかになったでしょう? だからね、見えたんだよ。
その女の子、多くの命を救うんだ。だってイッパイいろんなモノ、持って生まれるんだモン。マルも、そう思うよね。キュルルン。
「きっと、良いことよ。ね、マルコ。」
「キャン。」 ハイ。
「そうね。禍を断ち切る何かが、空から齎されたのね。」
「しょうよ。」
ニコッ。
「探せ! あの光の先に、清き娘の柱が居る。山守神が強く、強く御求めだ。」
山守社の祝が叫ぶ。
「行け! 娘の他は殺しても良い。」
祝とは思えません。けれど間違いなく、祝です。
・・・・・・祝ですよ、困った事に。
ナゼか思い込んでいます。清き娘の柱を山守神に捧げれば、祝辺を凌ぐ力を得られると。
山守神は仰いました。『生け贄も、人柱も要らぬ』と。なのにガン無視。
「要らないわ! もう止めてぇぇ。」
ガタガタ、ブルブル。
「山守神、お気を確かに。」
「シズエ。なぜウチの祝は皆、アアなるの?」
「・・・・・・ナゼでしょう。」
祝になる前までは皆、言うのだ。『生け贄も人柱も、霧雲山から無くします』と。なのに、祝になると変わる。
幾ら調べても分からない。呪いか? 祟りか? 他の神に頼み込み、調べてもらったがサッパリ。
「大蛇神。もしかすると、あの光。」
恐る恐る、烏神。
「闇食らいの品を、消して無くす何か。」
考えながら、呟くように仰った。
「そろそろ、戻りませんか。」
狐神がポツリ。毛皮を着ていても冷えるんです、寒いんです。