8-195 将来、楽しみだ
「ムメ、シッカリ。」
「ハルっ! う、生まれるぅ。」
豊田の長に狙われたムメを連れ、豊井から逃げ出したハル。いろいろ整えていたが力尽き、森の中で寄り添いグッタリ。
そんな二人を助けたのが、谷河の狩り人ジン。
谷河で生きる術を身に付け、同じように連れて来られてた人たちと、小柄山に村を作った。その中には狩り人、ジンの姿も。
引っ越したが今も、谷河と繋がっている。
「オギャァ、オギャァ、オギャァ。」 ヤットデタ、ココドコ、ツカレタァ。
湯で清められ、柔らかい布で包まれる。母の元へ連れられ、ムニャムニャ。
疲れてるの、お願いだから休ませて。生きて来た中で、最も大事だった。間違いナイよ、うんうん。
「ムメ、男の子だよ。」
「フフッ。目の辺り、ハルにソックリ。」
お猿サンみたいな赤子を見つめる、若い二人。
「アブゥ!」 ナンダコリャ!
見覚えのない、光輝く珠を握りしめていたのだ。嬰児でなくても驚く。掌をパッと広げ、マジマジと見ている。なのに大人は驚かない。
見えてナイ?
え。どういうコト、これ。ねぇねぇ、見てホラ。見えるよね。見えないの? ・・・・・・見えないんだ。
「何だ、この光は。」
深山社に居た社の司が、慌てて産屋へ走る。
「生まれました。女の子です。」
我が子を抱いた禰宜が、ソッと嬰児の顔を見せた。
「祝。」
「似てますよね。」
「口元がって、そうではナイ。」
初産はタイヘンだが、安産だった。親孝行な娘です。
我が子の顔を見て安心したのか、母はグッスリ。父に抱かれた娘も疲れているのに、見開いている。
「ホギャァ!」 イヤァァ!
イキナリ広い所に出て、グッタリ。ウトウトして気が付いたら、エッ。手から光が出ていた。ただ出ているダケではナイ。ビヨンと伸びていたのだ。
「ホギャァ、ホギャァ!」 ナニコレ、ウソデショ!
コワイこわい何よコレ、ってかココなに! 気持ち悪いのがウヨウヨしてる。どうなってるの。嫌よイヤ、来ないで近寄らないでぇぇ。
ブンブン。
「これは!」
パパ、びっくり。
「村、いや深山ごと清められた。」
社の司もビックリ。
ブンブンしました、間違いアリマセン。でもソレだけ。なのに『ポッと出』の嬰児が、闇を撫で斬りって。
「こんなに清らな赤子、初めてだ。祝と禰宜の子だからか。ハッ、神の愛し子か。山守から隠さなければ!」
社の人たち、大慌て。
社の司も祝の禰宜も、神に仕える人でしょ。なのにコレ、見えてナイの?
私、決めました。もうコレ出しません。とっても疲れた、今から寝ます。お願いだから静かにして。
・・・・・・スヤァ。