8-194 心の中で大騒ぎ
「コウ、コウ!」
ガタガタ震えながら叫び、蹲った。
「どうしたの、ツウ。」
駆け寄ったコウが、ツウをギュッと抱きしめる。
「闇が、闇が広がる。」
ウルウルしながら、両の掌を上に。あたたかい光が二人を包み込む。ふと気付くとツウの手に、見た事の無い鏡が。
「ツウ、この鏡。鳥の谷で触れて、消えた?」
「えぇ。谷で見た時も、こうして輝いて。」
金色の雲から射す光の下に、ツウとコウが居る。ツウの手には、白く輝く鏡。寄り添う二人に微笑みかけるように、フワフワ浮かんでいる。
「ニャッ! ニャンだ、この輝きは。」
雲井神の使わしめ、ゴロゴロ。
「天つ神の御力だ。」
雲井神、ウットリ。
・・・・・・天つ神と、仰いましたか?
「あら、空が。」
「フクよ、空ぁぁぁ。」
「どうした、キラ。」
「こ、コン。化かしてない、よな。」
祝オットリ、三妖怪ビックリ。
天つ神が迎えに? いや違う。浮かんでいるのは鏡だけ。ツウもコウも、しっかり立っている。
雪雲のように見えるが、あの雲は・・・・・・。雲の神?
豊かな雲を仰ぎ見る事が出来る、大いなる地の優れた様を讃える、神で在らせられるのか。
「チュウ。」
「クゥ。」
「モォォ。」
「ヒヒィン。」
「クエェ。」
「ピィ。」
「ヲォ。」
「ニャァ。」
金色の光は、隠の世にも届いた。和山の嶺から隠神が、仲良く並んで見上げ為さる。
「大蛇神、この光は。」
「豊雲神の御力だ。」
高天原の奥深く、決して御姿を現わされない。
どこに御坐すのか、天照大御神も御存じない。慎み深く美しい神が、御力を揮われた。
何があった! 考えられるのは一つ。けれど、まさか。
「コウ。私たち、契りましょう。」
「うん。オレが大人になるまで、待って。」
「こっち向いて。」
・・・・・・チュッ。
ツウから口づけされ、コウが固まった。
フクは目を隠すフリをして、指の間からシッカリ見てマス。愛し合う二人から、甘い何かが。となれば皆、心の中で大騒ぎ。
暫くすると鏡から、光の玉が飛び出した。
それが何なのか、良く分からない。けれどキラキラ輝きながら、ツウとコウの周りをクルクル。優しく美しい光が空に近づき、二手に分かれて飛んで行った。