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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
71/1618

4-25 オレは、間違えたのか?

「た、助け、て。く、だ、さい。」



早稲の、村の外れ。そこに、村がある。村と呼べるのか、わからない。それくらい、小さな村。みんな、他の村から逃げて来た。早稲の村に逃げたから、奪われた。そんな人たち。助け合い、暮らしていた。


衣はボロボロ、食べものは、あまりない。だから、川で捕ったり、森で獲った。


タツは、早稲の村で暮らしたかった。外れで暮らすなんて、嫌だった。


早稲の村は、豊かだ。早稲の村人は、ボロなんて着ない。飢え死ぬこともない。凍え死ぬこともない。


早稲の長に取り入れば、そう思った。だから、言われるまま。気に入られようとして。




シゲたちが言っていた。


「考えろ。」


「頭を使え。」


「まわりを、よく見ろ。」


考えてる、頭だって使ってる。まわり? 見たさ。見ていた、よ、な。


あ、頭が、い、痛い。オレは、オカシイ。そうだ、だから。だから、悪くない。


「こ、来ないで! た、タツさん、み、たいに、なっ、なり、たく、な、ないっ。」


震えながら、言っていた。オレは、間違えたのか?




ノリ、カズ。来てくれなかった。オレを、助けてくれなかった。シゲも。助けてくれない。ずっと、そばにいた。


いた? オレは、オレのそばには、誰もいない。誰も、誰も来なかった。イヌ。犬がいた。そうだ、森で拾った。仔犬だったから、ノリに。


「拾ったのはタツ、お前だ。飼え! 気を配って、手をかけろ。」


アイツ、犬のことになると。


「イヌ。」


オレが死んだら、どうなるんだろう。ノリが飼うか。犬、好きだし。




「しくじった、のか。取り・・・・・・違え、た・・・・・・の、か。」


シゲの言うこと、聞いとけば。


「おれ、は。」


みんな、と、もう。


「会え、ない、の、か。」


オレ、一人。


「母さん。」


どこ?


「父さん。」


どこ?


「オレ。」


悪くないよ。なのに。


「ジッチャ、バッチャ。」


オレ、悪くないよ、ね。


「オンジ。」


オレ、ここだよ。


「助け、に、来て、よ。」


一人は、嫌だよ。




早稲の長に言われた時、嬉しかった。やっと、東山へ行ける。帰れるんだって。でも、いなかった。


ジッチャとバッチャは、死んでた。まあ、年だし。でも、オンジは、いた。長になってた。


なのに、それなのに。




「タツ? 長の、甥?」


会いに行った。会いたかった。


「タツは死んだ。帰れ。」


会って、くれなかった。オレ、生きてたのに。


「早稲? 何を言い出すかと思えば。」


嘘じゃない。オレは早稲にいた。


「帰れ。」


会ってくれなかった。





「タツ、オレの手足になれ! オレのために働け。」


早稲の長が言った。


「会ってくれない? 東山の長より、早稲の長だろう。」


それも、そうか。あの時はそう、思ったんだ。




「た、すけ、て。」


誰でもいいから。


「黙れ、罪人。」


オレ、悪くない。


「シゲ、なん、で。」


いるんだろう? まだ。


「シゲ? ああ、帰ったよ。」


帰った?


「お、オレは、悪く、ない。ヒッ。」


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