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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
708/1585

8-192 思い掛けない出来事


嫌呂きろろ悪鬼おきも、ちゃんと解っている。事を上手うまく運ぶには『贈り物』が役に立つと。



今は冬。亀も蛇も蜥蜴とかげも、穴の中でスヤスヤ。


シンシンと降り積もった雪で、辺りは真っ白。寒い外へ出るワケがナイ。困った。贈るなら干物より、プリプリが良いのに。



・・・・・・魚も、プリプリだよね。


海や川より、凍った湖だ。氷に穴を開け、釣るゾ。糸の先にキラキラ光る貝を付けて、ピョコピョコするんだ。


一山いちのやまにある雫湖しずくのみずうみでは、わかさぎが良く釣れる。妖怪の間では知られた話。


寒いので行った事は無いが、この冬は休まず働いている。この機を逃せば次は無い。かもしれない。




子蜘蛛に贈るのだ、一匹でも釣れれば良い。


細い木の枝をポキッと折り、釣り糸をくくり付ける。おにときで手に入れた物だ、強い!



氷を叩いて割れば、魚が驚いて逃げる。他の妖怪なら、それでも叩き割るだろう。しかし、コンコンには狐火が有る。割らずにかせる。


まとを絞って、トリャァ!



静かに糸を垂らし、キラキラで引き寄せ、餌が跳ねているように見せる。『ピッチピチだよ、美味おいしいヨ』


針には何も、付けてナイけどネ。



魚にも使えた狐のてだて。いっぱい釣れた! わぁい、嬉しいな。


プリップリの魚を三匹選んで、笹の葉でソッと包む。残りは仲良く、半分こ。




思い掛けない出来事に、子蜘蛛たち大喜び。


冬にプリプリした魚を食べられるなんて、夢のよう。蓄えておいた虫もイイけど、食べたくなるんだよね。狐さん、ありがとう。



プランプランしていたのに幸せそうだったのは、お腹も心も満たされていたから。






大貝神おおかいのかみしづめ西国にしくにから耶万やまもたらされた、闇食らいのつるぎ。覚えていらっしゃいますか?」


「死んだ祝と憑き蛇が、闇を蓄えるために作った大穴に・・・・・・埋めて隠したアレか。」


「はい。その剣が脈打ちました。」


エッ!



あれ? アンリエヌの魔物が死んだうねに、蜘蛛の子を遣ったの。大貝神のおおせじゃ無かったんだ。



「して、その剣。今は。」


「闇を求めるも、動けぬようで。」



傷つけぬようソッと掘り、調べました。


埋めた時はまゆのようでしたがしぼみ、ほそっておりました。もう幾年いくとせかは持つでしょう。けれど急ぎ清め、包み直さねば。



「解った。行くぞ、土。」


「ハイ。」



もし、もしだ。アレが闇を纏い、耶万から。そんなコトになったら・・・・・・。統べる地は閉ざした、外へ漏れる事は無い。けれど、そうなれば。


ゾッ、ゾワゾワッ。


寒いトカ雪が降ったトカ、積もったのが凍るまでトカ、ごちゃごちゃ言って居られぬわ!



「良く知らせてくれた、ありがとう。和山社なぎやまのやしろへは、私から伝えよう。」


「はい。」


サッと平伏す、嫌呂と悪鬼。






ここは隠の世、一山。鳶神の御前です。闇食らいの剣が清め、包み直されたのを見届けてから参りました。



信じてますよ。けれど、どんなに小さな事でも何かあれば、隠の世に直ぐ知らせる『決まり』なので。


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